No.107
CT検診で発見された I期肺癌の予後
Survival of Patients with Stage I Lung Cancer Detected on CT Screening
The International Early Lung Cancer Action Program Investigators
New Eng J of Med 355 (17):1763-1771, 2006
目的
肺癌のCT検診で発見されたI期肺癌の治療成績を調査することにより、CT検診の妥当性を検証する。
対象
1993年から2005年の間、多施設共同でCT検診を行い31567人が登録され、うち27456人で毎年検診を繰り返した。対象は40歳以上・無症状で危険因子(喫煙、アスベストなど)のあるもの。初回検査で年齢は 40-85歳(中央値61歳)、喫煙係数0-141(中央値30) (単位:pack-years)。
方法
要精査とする条件は、初回検査では、5mm以上の充実性結節、8mm以上の非充実性結節、あるいは気管支内結節。
初回検査の4186例(13%), 2回目以降の検査の1460例(5%)が要精査となり、最終的に484例が肺癌(I期は85%, 412例、組織型は腺癌 294、扁平上皮癌 59、大細胞癌 23、小細胞癌 16、その他 20例)と診断された。平均腫瘍径は、初回検査で13mm、経年検査群で8mm。
結果
肺癌484例に対する治療は、手術411例、放射線治療か化学療法57例、無治療16例。I期で無治療の8例は5年以内に全例死亡。
I 期の手術例(375例)では、その病理組織において7%にリンパ節転移、9%では癌は多発性、17%で胸膜浸潤あり。
10年生存率は、
1) 肺癌全体 80%
2) 臨床的I期412例 88%
3) 診断確定から1か月以内に手術がなされた 302例 92%
4) 手術例で最終病理でもI期であった 347例 94%
結論
現状では米国では毎年発見される17万人の肺癌患者の95%が原病死している。I期肺癌(特に腫瘍径15mm以下)は治癒率が高く治療費が安いので、早期発見の可能性が高いCT検診は有意義である。
コメント
本論文の趣旨はCT検診の妥当性であるが、肺定位照射という観点から見ると以下の点などが興味深い。
1) 15-20mm以下で肺癌が発見されるようになると、定位照射も92%程度の制御をめざすべきなのか。
2) 9%もの症例で癌は同一葉内多発性。この場合、手術(葉切)なら完治するとしても定位照射では無理か。
3) ほぼ15mm以下で発見してさらに一部でPETも行っても、臨床的IA期の7%にリンパ節転移がある。
4) 日本でもCT検診が本格化すると、肺癌の80%以上がI期で発見され、さらにその何割かが定位照射になる日がくるのだろうか。
(岡嶋 馨)