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公益社団法人日本放射線腫瘍学会

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No.130
早期乳がんに対する放射線療法とCMF療法の(温存)術後同時併用療法に関して

Concurrent cyclophosphamide, methotrexate, and 5-fluorouracil chemotherapy and radiotherapy for early breast carcinoma.

Livi L, Saieve S, Borghesi S, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 71(3):705-709, 2008

Purpose

早期乳がんの術後化学療法と放射線療法の至適スケジュールを解明するため。

Patients and Methods

グループA:.乳房温存術後通常の術後照射+CMF(cyclophosphamide 600mg/m2 ,Methotrexate 40mg/m2, and 5-fluorouracil 600mg/m2)を施行した485名、

グループB:術後CMFのみ施行した300名、

グループC:.術後照射のみ500名の3グループに関して比較検討した。

術後照射は、50Gy(46-52Gy)にブースト(6-16Gy)をマージンの±、放射線腫瘍医の判断により追加した。急性障害はRTOG,晩期障害は Late Effects in Normal Tissues Subjective, Objective, Management and Analytic scale に基づいて記録した。

Results

1.グレード2以上の急性皮膚障害:グループA:グループC=21.2%:11.2%、p<0.0001),

2.RTが中断された頻度:グループA:グループC=8.5%:4.1%, p< 0.006),

3.RTの晩期障害:AグループとCグループに有意差は無かった。

4.グループAは全てのRTを全うした。

5.局所再発:Aグループ:Cグループ=7.6%:9.8%であった。この差はLog-rank test単独では有意差が無かった(p=0.98)が、多変量解析(病理、リンパ節転移の有無、年齢等)を用いると有意差を認めた。(p=0.04)

結論

乳房温存術後のRT+CMF同時併用療法は、毒性の点からは安全な術後療法である。

コメント

乳がんの術後照射に関しては再発率の上で明らかな有意差が示されているが、術後化学療法に関しては従来から幾多の論議が成され、現在でもその有用性には賛否両論がある。
又そのレジメに於いても、

CMF(Cyclophosphamide+Mesotrezate+5-fluorouracil),

CEF(Cyclophosphamide+Epirubicin+5-florouracil),

CAF(Cyclophosphamide+Adriacine+5-fluorouracil),

AC(Adriacine+5-fluorouracil),

EC(EPI:Pharumorubicin+Cyclophosphamide),

AC followed by PTX、等多種多様である。

日本ではCEFが多用されるが、欧米ではCMFが主流らしい。現在ではCEF又はCMF4-6クール施行後、タキソテール単独4クール、というレジメが用いられることが多い。この論文では一応A:RT+CT、B:CT単独、C:RT単独の3グループに分けられてはいるが、実際にデータを比較するのはAグループとCグループであり、Bグループは殆ど話題に上らない。術後化学療法単独、という選択は殆ど意味を成さなくなったことが判る。この論文に関して、1)急性障害とRT中断率が明らかに多いのに何故concurrent RT+CTにこだわるのか? 2)いつもながら欧米人に対する抗がん剤投与量の多さ、

3)log-rank testで有意差が無いのに敢えて多変量解析を持ち込んでまで有意差あり、と結論づけることにどのような意義があるのか、の3点が記憶に残った。3)に関してはさすがに結語で筆者のトーンが弱まり、「毒性の上からは安全」という遠慮した表現に留めていたのが印象的であった。全体としては、欧米人の化学療法それも同時併用療法に対する執念というか信仰に近いものが強く感じられ、一体この執念(信仰)がどこから来るものなのか、とても興味深かった。


(北原 規)

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