No.55
切除不能頭頸部癌に対する照射単独と同時併用Chemoradiotherapyの比較試験
An Intergroup phase III comparison of standard radiation therapy and two schedules of concurrent chemoradiotherapy in patients with unresectable squamous cell head and neck cancer.
Adelstein DJ, et al.
J C1in Oncol. 21:92-98, 2003
切除不能頭頸部扁平上皮癌に対するIntergroupの第三相比較試験の結果を報告している。3つのregimenの比較試験で、照射単独群と同時併用Chemoradiotherapyの2群の比較試験である。
A群は照射単独で70Gy/35F/7W(daily 2Gy)、B群は1987年にRTOGのphase II trialで好成績が得られたCDDP 100mg/m2(day1, 22, 43)を併用するregimen、C群は1991年にECOGより報告されたCDDPと5-Fuを併用したregimenで、このtrialではsplit courseの照射で30Gy+30-40Gy=60-70Gy(daily 2Gy)とCDDP+5Fuの2剤を3サイクル併用するものである。切除は可能ならばC群では2サイクル後か、全例で治療後の救済手術が検討された。
1992-1999年の期間に295人の患者がエントリーされた。A群で52%、B群で89%、C群で77%のgrade3以上の毒性が出現したため、予定症例の362例に到達しなかったが、この試験は終了した。追跡期間中央値は41カ月、3年overall survival はA群:23%、B群:37%、C群:27%であった。高用量のシスプラチン単剤の同時併用は、毒性を増加させるが、生存を有意に改善する結果が報告された。
頭頸部癌の化学療法は、neo-adjuvant も adjuvant も否定的な見解となり、照射と同時併用するconcurrent chemotherapy のみが有望視され、CDDP+5Fu がchemoradiation の標準的な使用薬剤として使用されている。しかし現在の使用量では遠隔転移の抑制効果が期待できず、また決して遠隔転移頻度が多い疾患ではない頭頸部癌では、局所制御効果に重点を置いた治療が生存率の向上にも繋がると考えれば、この結果はうなずける。5-Fuによる粘膜炎の有害反応により充分な照射線量の投与が制限されるよりは、正常粘膜への毒性が高くないCDDP単剤の増感効果を期待した照射+CDDPのconcurrent chemoradiationも有効な治療法となることを示唆する論文である。照射と併用する場合は多剤併用のみがベストとは言えないのかも知れない。
(西尾正道)