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No.68
限局型前立腺癌に対する6ヶ月間アンドロゲン抑制併用放射線治療と放射線治療単独の無作為臨床比較試験

6-months androgen suppression plus radiation therapy vs radiation therapy alone for patients with clinically localized prostate cancers: a randomized controlled trial

D'Amico AV, et al
JAMA 292:821-827, 2004

目的

前立腺癌の放射線治療線量は70Gyが標準になっているが、投与線量の増加と内分泌療法併用で治療成績の向上が期待される。このトライアルは3-dimentional conformal radiotherapy (3D-CRT) 70Gyに、内分泌療法(androgen suppression therapy: AST)6ヶ月間の併用で生存率の改善が得られるか否かについて無作為臨床比較試験を行う。

対象と方法

対象はT1b&T2、PSA10ng/ml以下、Gleason score 7以下、MRIにて被膜外浸潤か精嚢浸潤が認められる例で、骨転移(-)、リンパ節転移(-)、PS は0-1の症例。1995年-2001年に、3D-CRT群104例、3D-CRT+AST群102例が登録された。照射野は前立腺、精嚢を含みマージンを1.5cmとり、通常分割照射、3D-CRTにて計70Gy照射。内分泌療法は抗アンドロゲン製剤、黄体ホルモン製剤(LHRH)を6ヶ月間投与。 PSA10ng 以上で salvage therapy(LHRH or Bil. orchiectomy)を行った。

結果

中間観察期間は4.5年。3D-CRT: 103例、3D-CRT+AST: 98例、計201例が解析可能であった。5年生存率は放射線単独群78%、内分泌療法併用群88%と有為に併用群は優れていた。5年後のsalvage therapyの必要性は単独群82%、併用群57%と併用群が少なかった。心血管障害は単独群9例、併用群8例と差が無かった。併用群では女性化乳房、勃起障害が認められた。

考察

1997年に局所進行前立腺癌では70Gy+AST(3年間)が放射線治療単独よりも生存率で優れていることが示された。この研究では6ヶ月のASTの併用でも優れている事が確かめられた。1年以上のASTは骨粗鬆症、記憶低下、貧血、筋肉減少、顔面紅潮、勃起障害を来す。この研究結果はAST期間の短縮によって、死亡の危険率を低下させる事が示唆された。また、骨盤腔リンパ節は照射されていないがもし照射すれば成績が良くなるか?70Gy以上の線量で成績が向上するか?等は今後の問題である。

コメント

日本人は欧米人に比べて内分泌療法の副作用が少いと言われているが、今後は長期間併用のデメリットは問題となると考えられる。


(寺嶋 廣美)

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