No.61
前立腺癌に対する少分割原体照射:5年間の結果解析
Hypofractionated conformal radiotherapy in carcinoma of the prostate: five-year outcome analysis
JE Livsey, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 57:1254-1259, 2003
目的
前立腺癌のα/β比率は従来考えられていたものより低いのではないかとの報告がある。著者らは前立腺癌の放射線治療としては分割回数が感受性に関与している可能性を考え自施設で前立腺癌の治療として少分割照射を実施。その有用性について検討した。
方法
T1-4N0M0前立腺癌705例を対象とし少分割原体照射を行った。ホルモン療法および外科治療を受けたものは含まれていない。平均年齢は 68(49-84)歳であった。治療前のPSA値は13(0.6-270)ng/mLであった。内訳は、T1 125例(18%)、T2 365例(52%)、T3/4 215例(30%)であり、Gleason 2-6 463例(66%)、Gleason 7-10 242例(34%)であった。また治療前のPSA値別では10ng/mL以下291例(41%)、10-20ng/mL 228例(32%)、20ng/mL以上186例(27%)であった。中間追跡調査期間は48(1-82)ヶ月であった。原体照射の内容はCTVを前立腺および精嚢腺とし開度余裕を1cmとし、分割は1回3.13Gy、16fr、総線量 50Gy、治療期間は22日であった。
結果
全体での5年生存率は83.1%、disease-specific survivalは91%であった。5年bNED(biochemical-free survival)は、PSAの値別では10ng/mL以下73%、10-20ng/mLで52%、20ng/mL以上 35% であり、T分類ではT1/2 64%、 T3/4 38%であった。またGleason Scoreでは2-6 61%、7以上46%であった。これらを合わせ3つのriskグループに分けた。good risk群(Stage T1/2かつPSA 10ng/mL以下かつGleason score 7以下、n=181)、intermediate群(Stage T1/2、PSA 10ng/mL以下、Gleason score 7以下のいずれか一つが当てはまらないもの、n=247)、poor群(二つ以上当てはまらないもの、n=277)それぞれのbNEDは82%、56%および39%であった。なお、有害事象はROTG 2以上の腸毒性が9%、膀胱毒性は5%であった。
結論
これらのデータは、少分割照射(hypofractionated radiotherapy)でも、従来の1回1.8-2.0Gy、総線量65-70Gyの照射とほぼ同程度の腫瘍制御効果があり、good risk群に属する患者では受け入れ可能なレジメンとなりうることを示唆している。しかしintermediate risk群およびpoor risk群での有効性は乏しく、現在IMRTでの20fr、Total 60Gyまでのhypofractionated radiotherapyを実施している。
コメント
前立腺癌の放射線治療の有用性が認められてきた今日、現在その「治療期間が長すぎる」問題の解決方法を考慮する際の参考ヒントになる論文かと思いました。
(小野 誠治)