No.282
Sequential [177Lu]Lu-PSMA-617 and docetaxel versus docetaxel in patients with metastatic hormone-sensitive prostate cancer (UpFrontPSMA) : a multicentre, open-label, randomised, phase 2 study
Journal:Lancet Oncol. 2024 Oct;25(10):1267-1276.
URL https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1470204524004406?via%3Dihub
概要
- 目的: [177Lu]- PSMA-617は転移性去勢抵抗性前立腺がん患者の生存率と生活の質を改善するが、ホルモン感受性前立腺がん患者に利益をもたらすかどうかは不明である。新規の高腫瘍量転移性ホルモン感受性前立腺がん患者を対象に、ドセタキセル治療前 [177Lu]-PSMA-617(UpFrontPSMA)の効果を評価することを目的とした。
- 対象:UpFrontPSMAは、オーストラリアの11施設で実施された、医師主導、多施設、非盲検、ランダム化、第2相試験である。適格患者は、臨床的に有意な神経内分泌分化または組織学的に小細胞癌所見のない前立腺腺癌で、年齢が18歳以上、アンドロゲン除去療法を開始してから4週間未満、Eastern Cooperative Oncology Group PSが0~2であり、[68Ga]-PSMA-11 PET-CTで高腫瘍量PSMA親和性疾患であり、FDG-PET/CTで大きな不一致がなかった患者とした。患者は、登録時の従来の画像診断による病変の体積およびアンドロゲン除去療法の期間により層別化され、実験的治療([177Lu]-PSMA-617の投与に続いて6週間後にドセタキセルを投与)または標準治療(ドセタキセル単独)にランダムに1:1に割り当てた。患者も治験責任医師も治療割り当てについてマスクされていませんでした。実験群の患者は、6週間ごとに2サイクルの[177Lu]-PSMA-617 7.5 GBqを静脈内投与され、その6週間後に6サイクルのドセタキセル75 mg/m2を3週間ごとに静脈内投与された。一方、標準治療群の患者は、6サイクルのドセタキセル75 mg/m2を3週間ごとに静脈内投与された。すべての患者は継続的なアンドロゲン除去療法を受けた。主要評価項目は、modified intention-to-treat analysisを用いて評価した48週時点での前立腺特異抗原検出限界以下(≤0.2 ng/mL)であった。
- 結果
2020年5月5日から2023年4月18日までの間に、130人の患者がランダムに割り当てられ、63人(48%)が[177Lu]-PSMA-617とドセタキセルの併用療法に、67人(52%)がドセタキセル単独療法にランダムに割り当てられた。患者は全員男性で、人種や民族のデータは収集されなかった。追跡期間中央値は2.5年(IQR 1.8-3.0)であった。ドセタキセル単独群の4人の患者はランダム化後に同意を取り下げたため、スクリーニングを超えるデータは収集されなかった。さらに各群2人ずつの患者は、48週時点で主要評価項目について評価できなかった。[177Lu]-PSMA-617+ドセタキセル群では全例に[177Lu]-PSMA-617が2サイクル投与された。ドセタキセルの6サイクル投与を完了した患者は[177Lu]-PSMA-617+ドセタキセル群で79%、ドセタキセル単独群では84%だった。 [177Lu]-PSMA-617 + ドセタキセル群では、48週時点でPSAが検出限界未満であった患者は61人中25人(41%)(95% CI: 30-54%)であったのに対し、ドセタキセル単独群では61人中10人(16%)(95% CI: 9-28%)であった(OR 3.88、95% CI 1.61-9.38、p=0.0020)。なお12週時点では17%と18%で差がなかった。Grade 3または4の治療関連有害事象で最もよくみられたのは、発熱性好中球減少症([177Lu]-PSMA-617 + ドセタキセル群では63人中7人(11%)に対し、ドセタキセル単独群では63人中6人(10%))と下痢([177Lu]-PSMA-617 + ドセタキセル群では63人中4人(6%)に対し、ドセタキセル単独群では認めなかった)であった。重篤な有害事象は、[177Lu]-PSMA-617+ドセタキセル群の患者16人(25%)に発生し(いずれも[177Lu]-PSMA-617との関連は明確ではなかった)、ドセタキセル単独群の患者16人(25%)に発生した。ただ[177Lu]-PSMA-617+ドセタキセル群で口腔乾燥を全グレードで37%に認め、ドセタキセル単独群は0%だった。治療関連死亡は発生しなかった。 - 結論:[177Lu]-PSMA-617 の投与に続いてドセタキセルを投与すると、毒性作用の増加なしに、ドセタキセル単独投与と比較して、新規高腫瘍量転移性ホルモン感受性前立腺がん患者に対する抗腫瘍効果が改善された。このデータは、転移性ホルモン感受性前立腺がんにおける [177Lu]-PSMA-617 の役割を潜在的に支持するものである。
コメント
本邦ではまだ未承認の[177Lu]-PSMA-617の転移数の多い前立腺がんに対するホルモン治療とドセタキセルとの併用治療の効果を示したもので、毒性を高めることなく治療効果を高める可能性が示唆された。PSA-PFSは18カ月以降に差が開き、[177Lu]-PSMA-617+ドセタキセル群が上回っており、期待が持てる結果であった。現在、転移を有するmHSPC患者を対象に、177Lu-PSMA-617と標準治療の併用と標準治療のみを比較する第3相臨床試験PSMAddition試験(NCT04720157)が行われており、その結果にも期待したい。また日本においても[177Lu]-PSMA-617が早期に使えるようになることも期待したい。
神宮 啓一(がん放射線治療推進委員会RI内用療法小委員会)