No.277
卵巣遮蔽全身照射における卵巣、骨盤骨の線量評価と妊孕性、再発リスクとの関連
Dosimetric evaluation of ovaries and pelvic bones associated with clinical outcomes in patients receiving total body irradiation with ovarian shielding
Keiko Akahane, Katsuyuki Shirai, Masaru Wakatsuki, et al.
Journal of Radiation Research, Volume 62, Issue 5, September 2021, Pages 918–925, https://doi.org/10.1093/jrr/rrab066
卵巣遮蔽をした12 GyのTBIを含む骨髄破壊的前処置で造血幹細胞移植を受けた女性患者20例について後方視的検討を行っている。症例は白血病17例と良性造血器疾患3例、年齢中央値23歳であった。照射は側臥位のLong-SSD法で卵巣遮蔽は鉛ブロックを用いている。9割の患者で月経が回復したが、月経回復の有無で卵巣線量の平均は共に2.4 Gyと差はなかった。また、再発は5例に見られたが、再発の有無で骨盤線量に差はみられなかった。そして2名が妊娠し、うち1名は出産に至っている
これまでの知見として、12 GyのTBIによる月経回復率は2割以下で、妊孕性はほぼ失われると考えられる。少数例の検討ではあるものの、卵巣遮蔽により卵巣機能低下が明らかに抑えられることが示されたと言えるだろう。一方で、懸念される再発率上昇については明らかには見られていない。若年者にとって卵巣機能・妊孕性温存は極めて重要な問題であり、本報告は今後の大きな課題と可能性を提示している。強度変調放射線治療によるTBIを行う場合にも参考になる知見である。
江島泰生(編集委員会)