No.275
放射線誘発γ-H2AX Fociアッセイを用いた骨盤放射線治療後の晩期有害事象の予測
Prediction of late adverse events in pelvic cancer patients receiving definitive radiotherapy using radiation-induced gamma-H2AX foci assay
J Radiat Res. 2023 Nov 21;64(6):948-953. doi: 10.1093/jrr/rrad079.
骨盤放射線治療後晩期有害事象の危険因子として様々な因子が報告されている(高齢、喫煙歴、糖尿病、低体重、腹部手術の既往、DVHパラメーターなど)が、個別化したリスクの評価は現時点では困難である。γ-H2AXフォーカスはDNAの二本鎖切断を可視化することができ、個々のDNA損傷~修復を評価できる有益なバイオマーカーであると考えられている。本研究は、放射線治療後の晩期有害事象を予測するために、DNA修復能の指標として機能する末梢血リンパ球(PBL)内の放射線誘発γ-H2AXの動態を評価した。放射線治療を受ける子宮頸がん、腟がん、肛門がんの患者46名のPBLに1 Gy照射し、照射後30分と4時間に測定したPBL内のγ-H2AXフォーカスの減少割合を、foci decay ratio(FDR)として測定した。FDRの範囲は0.51から0.74(中央値0.59)であり、多変量解析により、高血圧とFDR0.59以上が、晩期腸管・尿路有害事象に有意に関連していることが示された。
本研究はサンプル数が少なく、γ-H2AXの計測は熟練が必要という問題点もあるが、PBL内の放射線誘発γ-H2AXフォーカスの測定、動態評価が、放射線療法後の晩期腸管・尿路有害事象のリスクを予測する有効な手段である可能性を示唆している。今後さらなる検討を深めていく必要がある。
礒橋 文明(編集委員会)