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公益社団法人日本放射線腫瘍学会

JASTRO Japanese Society for Radiation Oncology

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No.272
肛門管扁平上皮癌に対する5-FUとMMCを用いた同時化学放射線療法の第II相試験(JROSG 10-2)

Keiko Nemoto Murofushi, et al.
A phase II study of concurrent chemoradiotherapy with 5-fluorouracil and mitomycin-C for squamous cell carcinoma of the anal canal (the JROSG 10–2 trial).

J Radiat Res 2023 Jan;64(1):154-161.
https://doi.org/10.1093/jrr/rrac069

この研究はJROSG(11施設)による臨床病期I-III期の肛門管原発の扁平上皮癌に対する化学放射線療法の第II相試験である。31例中30例がIMRTで治療され(1例のみ3DCRT)、原発巣と転移リンパ節に59.4Gy/33回、予防的リンパ節領域に36Gy/20回または49.5Gy/33回の照射が行われた。化学療法には5-FU(800mg/m2/日×4日間)とMMC(10mg/m2)が計2コース同時併用された。経過観察期間の中央値は33.3ヵ月で、2年の無病生存率、全生存率、局所制御率、無人工肛門生存率はそれぞれ77.4%、93.5%、83.9%、80.6%と良好な結果が得られた。血液毒性によって4人の照射が中断されたが、いずれも中断期間は6日以内であり、血液毒性以外にGrade 4以上の急性期障害はみられなかった。また、1例の骨盤骨折を除き、Grade 3以上の晩期障害を認めなかった。欧米では5-FUの標準量は1日1000mg/m2だが、我が国ではこの試験のように800mg/m2程度で使用されることが多い。それでも治療成績は欧米の報告に劣らず、IMRTの使用も相まって障害を低く抑えられている。本邦では比較的まれな肛門管扁平上皮癌の前向き試験の結果であり、根治性が高く、人工肛門を回避できる標準治療としての化学放射線療法の担う役割は大きい。

幡多政治(編集委員会)

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