No.189
1-3個の脳転移を有する非小細胞肺癌に対する全脳照射と定位手術的照射とテモゾロミドあるいはエルロチニブの併用の第Ⅲ相試験:RTOG0320
A Phase 3 Trial of Whole Brain Radiation Therapy and Stereotactic Radiosurgery Alone Versus WBRT and SRS With Temozolomide or Erlotinib for Non-Small Cell Lung Cancer and 1 to 3 Brain Metastases: Radiation Therapy Oncology Group 0320
Sperduto PW, Wang M, Robins HI, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 85(5):1312-1318, 2013
背景
1-3個の脳転移を有する非小細胞肺癌に対して全脳照射(WBRT)+定位手術的照射(SRS)にテモゾロミドあるいはエルロチニブを併用することで全生存が改善するかを検討する.
方法
WBRT(37.5 Gy/15回)+SRS(15-24Gy)(単独群 n=44),WBRT+SRS+テモゾロミド(TMZ群 n=40),WBRT+SRS+エルロチニブ(ETN群 n=41)を行い,テモゾロミドとエルロチニブは照射後6ヶ月まで継続可とする.
結果
生存期間中央値は単独群,TMZ群,ETN群で13.4,6.3,6.1ヶ月(有意差なし).
治療後6ヶ月の中枢神経系再燃までの期間と全身状態は単独群で良好であった.
Grade3-5の有害事象は単独群,TMZ群,ETN群で11%,41%,49%であった(p<0.001)
結論
WBRT+SRSにテモゾロミドやエルロチニブを併用することは生存を改善せず,有害な影響をおよぼした可能性があった.解析は検出力不足であり,これらのデータは併用群で毒性によって生存が低下したことを示唆するが,立証はしていない.
コメント
登録が進まず,予定症例数の1/3にあたる126例で試験が終了したため,上記のように結論付けられている.
とは言えTMZ群,ETN群での重篤な有害事象の多さが目に付く.
有害事象の内容は本編を確認頂きたいが,中枢神経系の毒性との関連を想起させるものが少なくない.
これまでに肺癌脳転移のWBRTにエルロチニブやゲフィチニチブを併用した場合に毒性が高まったとする報告は少ない
(Lung Cancer. 70(2):174, 2010のみ予期せぬ有害事象が増加).
したがって,有害事象の増加はSRSを追加したことに起因する可能性が考えられる.新しい分子標的薬が次々と承認されており,それらと放射線治療の併用の功罪に関しては気になるところである.臨床試験から症例報告に至るまで幅広く情報を得ることが肝要だろう.
Evidence level 1b
PMID: 23391814
(埼玉医大国際医療センター 江原 威)