(2020年07月更新)
No.247
切除可能および切除可能性境界域膵臓癌に対する術前化学放射線療法 vs. 即時手術のランダム化比較試験(PREOPANC Trial)
Preoperative Chemoradiotherapy Versus Immediate Surgery for Resectable and Borderline Resectable Pancreatic Cancer: Results of the Dutch Randomized Phase III PREOPANC Trial Eva Versteijne, et al.
J Clin Oncol. 2020 Jun 1;38(16):1763-1773. doi: 10.1200/JCO.19.02274.
【背景・目的】
- 膵臓癌の約20%が切除可能~切除可能性境界域(ボーダーライン)である。
- 標準治療は切除+術後補助化学療法とされているが、術前化学放射線療法(CCRT)によるダウンステージングやR0切除率向上が期待されている。
- 術前化学放射線療法の意義を検証するためのランダム化比較試験が行われた。(PREOPANC Trial)
【方法】
- オランダの16施設で切除可能~ボーダーライン膵臓癌を術前CCRT群と即時手術群に割り付け(2013/04-2017/07)
- 術前CCRT群は36Gy/15Fr+GEM(2サイクル)→手術→術後GEM(4サイクル)
- 即時手術群は手術→術後GEM(6サイクル)
- 主要評価項目は全生存
- 副次評価項目は、無病生存、局所領域無再発期間、無遠隔転移期間、切除率、R0切除率、有害事象
【結果】
- 術前CCRT群119例、即時手術群127例が登録
- 全生存は術前CCRT群16.0ヶ月、即時手術群14.3ヶ月(P=0.096)で統計学的有意差は示せなかった。
- このうち、ボーダーライン症例のみに絞ると、術前CCRT群17.6ヶ月、即時手術群13.2ヶ月(P=0.029)で術前CCRT群が優れていた。
- 手術時のリンパ節転移陽性率、神経周囲侵襲率、静脈侵襲率、R0切除率などの病理学的所見は術前CCRTが優れていた。
【考察】
- 膵臓癌術前CCRTについての初めてのランダム化比較試験
- 全症例では主要評価項目である全生存での上乗せ効果を示せなかったが、ボーダーライン症例についてはpromisingな結果であった。
【コメント】
- 膵癌術前化学放射線療法の適応については日本でも施設ごとにかなりばらつきがあり「積極的にやっている施設は結構やっているが、やってない施設は全然やっていない」という状況と推察する。
- 今回のPhase IIIでは、手術可能なものは即時手術、ボーダーラインには術前CCRTに期待が持てるという、日常臨床に合致する結果が示された。
- 今回は36Gy/15Frというmoderately hypo-fractionの線量が採用されているが、これを日本でも4月から保険収載された定位照射で行った場合にはどうなるかも興味が出てくる。
(東京大学医学部附属病院 竹中 亮介)
PMID: 32105518
Evidence level: Ib