No.121
前立腺癌に対する、アンドロゲン抑制 + 放射線vs 放射線; ランドマイズドトライアル
Androgen suppression and radiation vs radiation alone for prostate cancer: a randomized trial.
D'Amico AV, Chen MH, Renshaw AA, et al.
JAMA 299:03:00:289-295, 2008
Context
Comorbidityがアンドロゲン抑制療法(AST)のような特殊な抗癌療法の悪影響を増大させるか否か?
Objectives
6ヶ月のAST併用放射線療法と放射線単独療法を比較し、Comorbidityと全死因の関係を検討する。
Design, Setting, and Patients
マサチューセッツ州の大学と公立のメディカルセンターで、1995年12月1日から2001年4月15日まで、206人男性の局所限局高危険度前立腺癌患者を、放射線照射単独群と放射線+ AST群のランドマイゼーションを行った。それぞれの群における、全死因とComorbidity score(Adult Comorbidity Evaluation 27(ACE27))の関係をlog-rank test で比較した。
Main Outcome Measure
全ての死因時期。
Results
2007年1月15日で、中間解析期間7.6年(0.5-11年)となり、74人が死亡した。放射線照射単独群において放射線+ AST群と比較して全死因の危険度の有意な増加が観察された(44 vs 30deaths; hazard ratio(HR), 1.8;95% confidence interval(CI), 1.1-2.9; P=.01)。
しかしながら、全死因の危険度上昇はComorbidityがない・わずかにある群で放射線照射単独治療においてのみ認められた(31 vs 11deaths; HR, 4.2;95% CI, 2.1-8.5; P<.001)。
Comorbidityが中等度・高度の群においては放射線照射単独群と放射線+ AST群で全死因の危険度の違いは無かった(13 vs 19deaths; HR, 0.54;95% CI, 0.27-1.10; P=.08)。
Conclusion
放射線照射に6ヶ月のASTを加えることによって、所限局高危険度前立腺癌患者の粗生存率は改善したが、このことは Comorbidityが中等度・高度でない群にのみ証明された。更なる臨床研究が必要である。
D’Amicoらからの報告で6ヶ月の ASTを放射線照射に加えることによって、照射単独に比べ5年PSA再発の減少(JAMA 2000, 284;10, 1280-1283)、さらには粗生存率の改善(JAMA 2004, 292;7, 821-827)が報告された。
今回の報告では全死亡のリスクが検討され、Comorbidityがない・わずかにある群のみで放射線照射単独治療に危険度の上昇が認められた。
ひらたく言うと“Comorbidityが少ない群ではASTの併用が必要だが、Comorbidityのある群ではASTの併用の必要性は少ない”と言うことになる。
ここでComorbidityとは何か?であるが、これは心機能、呼吸器機能、腎機能、内分泌機能初め、精神状態・体重などを指標にした全身状態の評価のスコアリングである(http://oto.wustl.edu/等)。今後はこのような解析も必要となるのかも知れない。
(茂松 直之)