No.211
進行頭頸部癌に対する導入化学療法と同時化学放射線療法 対 同時化学放射線療法:RCTのメタ解析
Induction chemotherapy followed by concurrent radio-chemotherapy versus concurrent radio-chemotherapy alone as treatment of locally advanced squamous cell carcinoma of the head and neck (HNSCC): A meta-analysis of randomized trials.
Budach W, Bolke E, Kammers K, et al.
Radiother Oncol. 2015 Nov 14. (Epub)
背景
進行頭頸部扁平上皮癌に対する導入療法としての3剤併用療法(ドセタキセル、シスプラチン、5-FU:TPF)は2剤併用療法(シスプラチン、5-FU:FP)と比較して全生存を改善させることが知られている。しかし、TPF療法の同時化学放射線療法(CCRT)がCCRT単独と比較して予後を改善させるかどうかは議論の余地が残っている。
方法
進行頭頸部扁平上皮癌に対する導入療法とCCRT 対 CCRTの5つのランダム化試験、合計1022人の患者をメタ解析の対象とした。
結果
全生存期間(OS)に関して有意差なし(ハザード比: 1.01, 95%信頼区間 0.84-1.21, p値 = 0.92)
無増悪生存期間(PFS)に関しても有意差なし(ハザード比: 0.91, 95%信頼区間 0.75-1.1, p値 = 0.32)
結論
進行頭頸部扁平上皮癌に対する化学放射線療法において、導入化学療法はOSやPFSを改善させない。
コメント
TAX323試験およびTAX324試験の結果より進行頭頸部癌に対する導入療法としてのTPF療法は有効とされていた。しかし、導入療法後のCCRTがCCRT単独と比較して治療成績を改善するかどうかは不確かであり、その有効性は確立していない。今回のメタ解析では導入療法としてのTPF療法の優位性は認められなかったため、その導入は慎重に検討しなければならない。
しかしこの解析が直ちに導入療法を否定するものではない。
また、この解析では、T分類やN分類、腫瘍の局在、HPV/p16の有無、パフォーマンスステータス(PS)、喫煙歴等の頭頸部癌の予後因子による層別化解析までは施行できていないため、今後は、予後因子別に導入療法の有意性が検討されるような臨床試験の実施が望まれる。
Evidence Level : Ia
PMID: 26589131
(神奈川県立がんセンター・早川 豊和)