No.167
局所進行非小細胞肺癌に対するドセタキセル+シスプラチン併用同時化学放射線療法と、マイトマイシン+ビンデシン+シスプラチン併用同時化学放射線療法の第Ⅲ相比較試験 OLCSG 0007.
Phase III trial comparing docetaxel and cisplatin combination chemotherapy with mitomycin, vindesine, and cisplatin combination chemotherapy with concurrent thoracic radiotherapy in locally advanced non-small-cell lung cancer: OLCSG 0007
Segawa Y, Kiura K, Takigawa N, et al.
J Clin Oncol Vol 28, No. 20, p3299-3306, 2010.
はじめに
1990年代には切除不能局所進行非小細胞肺癌(LA-NSCLC)に対し、シスプラチンを含む第2世代抗癌剤併用の同時化学放射線療法が標準治療とされた。一方、近年シスプラチンに第3世代の新規抗癌剤を加えた化学療法の有用性が認められている。
しかし早期同時化学放射線療法のスケジュールでの第2世代抗癌剤と第3世代抗癌剤の比較試験はほとんど行われていない。筆者らの岡山肺癌治療研究会(OLCSG)で行われた第Ⅰ/Ⅱ相試験では2年生存率54%と報告されている。
それをもとに今回OLCSGで、標準アームをMVP療法(マイトマイシン+ビンデシン+シスプラチン)とし、試験アームDP療法(ドセタキセル+シスプラチン)との第Ⅲ相比較試験が行われた。
目的
LA-NSCLCに対するドセタキセル,シスプラチン(DP)併用同時化学放射線療法の有効性を明らかにする。
対象および方法
切除不能局所進行非小細胞肺癌(LA-NSCLC)(ⅢA/ⅢB)で75歳以下、PS 0-1, 照射野が片肺1/2を超えない症例でDP群とMVP群のランダム化比較試験。DP群はドセタキセル40mg/m2(day 1,8,29,36)+シスプラチン40mg/m2(day1,8,29,36)であり同時に胸部放射線治療60Gy/30fを併用し、MVP療法と比較検討した。
結果
2000年~2005年の間に200例が登録された(DP群 99例、MVP群 101例)。治療成績は奏効率、2年生存率、無増悪生存期間、生存期間中央値はそれぞれDP群で78.8%、 60.3%、13.4カ月、26.8カ月、MVP群で70.3%、48.1%、10.5カ月、23.7カ月であり、DP群で良好は傾向が認められたが有意差はなかった。(主要評価項目の2年生存率はearly-period, weighted log-rankでDP群が良好(p=0.044))。
有害反応についてはG3の好中球減少がMVP群で有意に多く認められ(MVP群 39%, DP群22%)、G3-4の食道炎はDP群で多い傾向が認められた(MVP群 6%, DP群 14%)。
結論
LA-NSCLCに対するドセタキセル,シスプラチン(DP)併用同時化学放射線療法はMVP療法の代わりうる治療法である。
コメント
シスプラチンを基盤とし、第3世代抗癌剤を用いた切除不能LA-NSCLCに対する、わが国から報告された貴重なランダム化第Ⅲ相比較試験である。当初報告されていた2年生存率の優位性は最終的な報告では有意差が見られなかったが、現状としては実地臨床に用いることが可能な標準的レジメンといえる。(日本においてMVP療法を超えるエビデンスはほとんどない。従来のMVP療法は線量が56Gyであるが、本試験では60Gyを用いていて従来の報告よりMVP療法の治療成績は良好である。)
ただ放射線治療が従来の2次元治療であり、V20などの現在日常的に評価すべき因子の評価も時代的に行われていない。今後は現在主流の3次元治療を用い、PET/CT等の病期決定、治療計画の施行のもとでの臨床試験が必要であると考えられる。
(群馬大学大学院医学系研究科 高橋 健夫)