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公益社団法人日本放射線腫瘍学会

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No.136
子宮及び子宮頸部の interfractional motionに関する評価:婦人科癌におけるtarget volume設定に与える影響

An assessment of interfractional uterine and cervical motion: Implication for radiotherapy target volume definition in gynaecological cancer.

Taylor A, Powell ME.
Radiother Oncol. 88(2):250-257, 2008

目的

婦人科癌の放射線治療(外部照射)における標的体積のinternal marginを設定するために子宮体部及び頸部のinterfrational motionを定量的に検討する。

方法

33名の婦人科癌患者に対し2日連続にてMRIを撮像した。2回のMRI画像をco-registerし、子宮体部と頸部の外輪郭を描出した。3点(point U: 子宮底部頂点、point C: 子宮頸部後部、point V: 腟上部)を定義した。
2回の画像データ間の各点の3方向の解離を測定した。更に各点の位置変化と子宮体部の角度(前後屈)について、膀胱体積と直腸断面計との相関をみた。

結果

point Uの位置解離平均(±1SD)は、前後方向で7mm (±9.0mm)、体軸方向で7.1mm(±6.8)、側方向で0.8mm(±1.3)であった。同様にPoint Cは前後方向で2.7mm (±2.8mm)、体軸方向で4.1mm(±4.4)、側方向で0.3mm(±0.8)であった。子宮体部の体軸方向の移動量は膀胱体積と相関し、子宮頸部及び腟の移動量は直腸径と相関した。

結論

子宮体部の移動が特に体軸方向と前後方向に大きく起こりうることが示された。一方子宮頸部の動きは著明ではなかった。直腸内容物の充満度は子宮頸部の移動に多少影響し、膀胱充満度は子宮体部位置に大きな影響を与えた。治療時の膀胱・直腸内の状態への配慮が必要であることが示唆された。
以上の結果から、子宮体部・頸部・腟のinternal marginは不均等に設定することが必要である。子宮体部・子宮頸部・腟については、前後15mm, 体軸15mm、側方7mmを、リンパ節領域及び子宮傍組織については全方向7mmを推奨する。

解説

子宮頸癌・体癌に対する3D外部照射治療計画における、primary CTVに対するinternal marginの算出を、2日連続で撮像したMRIにより定量的算出をこころみた研究である。従来考えられていたように子宮は位置移動が決して小さくない臓器であることが定量的に確認された。
また、体部・頸部・腟でその傾向と数値が異なること、方向により移動量とパターンが異なることが明らかにされ、PTV margin設定の参考になると思われる。直腸内のガス・便の状態により前立腺の位置が大きく移動することが知られているが、子宮においても子宮体部は膀胱の充満度により大きく影響をうけることが定量的に示されていることも、子宮頸癌の高精度外部照射を行う上での全処置の必要性を示唆し非常に興味深い。
子宮頸癌の場合には膀胱を充満させた状態での治療が小腸線量を低減できる上で望ましいと考えられているが、日々の充満の度合いをどの程度一定にできるか等、難しい問題は残されている。
現在我々は厚生労働省がん助成金研究班平岡班の援助を受け、子宮頸癌外部照射のCT治療計画におけるCTVコンツーリングマニュアルの策定に向けた小委員会を組織し検討中である。今後標準的CTVと並行して、internal marginや前処置に関するコンセンサスも形成する必要があると考えられる。
本邦の婦人科腫瘍医の放射線治療に対する期待はCCRTを中心に非常に高まっている。子宮頸癌のIMRTは、その得失に関して懐疑的な意見も少なくないが、従来の前後対向2門はもちろんのこと4門照射と比較しても小腸線量を減じることが期待され、婦人科腫瘍医の大きな危惧である腸閉塞を減じる可能性において意義は大きい。
IMRTの実施にむけて、標準的CTV、internal margin等の検討が更に進められるべきと考える。


(戸板 孝文)

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