JASTRO

公益社団法人日本放射線腫瘍学会

JASTRO Japanese Society for Radiation Oncology

ホーム > JASTRO 日本放射線腫瘍学会(医療関係者向け) > 学会誌・刊行物 > Journal Club > 悪性中皮腫手術後の IMRT: Duke大学での経験

No.133
悪性中皮腫手術後の IMRT: Duke大学での経験

Intensity-modulated radiotherapy for resected mesothelioma: the Duke experience

Miles EF, Larrier NA, Kelsey CR, et al.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 71(4):1143-1150, 2008

目的

悪性中皮腫に対し,胸膜外肺全摘術(Extrapleural pneumonectomy; EPP)後のIMRTの安全性と効果について検討する。

対象および方法

2005年7月から2007年2月までにIMRTを行った13例。手術は全例EPP施行。残存腫瘍が疑われる部分および,手術部の下縁内側縁にもクリップを置いた。放射線治療は3-5mm厚のCTを使って計画し,手術創はカテーテルでマークし,1cmのボーラスを置いた。CTVは手術前の患側全胸郭,手術創部と転移リンパ節。PTVマージンは0.5cmから1cm。

化学療法は12例に併用した。 2例手術前,3例放射線治療前,7例放射線治療後。全例アリムタとシスプラチンの併用であった。

結果

IMRTからの経過観察期間中央値は9.5ヶ月(6-20ヶ月)。PTVの線量の中央値は45Gy(39.6Gyから55Gy)で,3例にブースト(中央値10Gy)を行った。

急性有害事象
13例(100%) G1-2 悪心嘔吐
4例(31%) G1-2 全身倦怠
3例(23%) G2以上の肺合併症;
G2以上の肺合併症のある症例の健側肺片肺のMLD,V20,V5は7.9Gy,0.2%,92%。肺合併症のない症例は7.5Gy, 2.3%, 66%

晩期有害事象
1例(8%) G5肺合併症(6ヵ月後)
1例(8%) 患側腕神経障害

局所効果と生存率
6例(46%)局所再発4例(31%)遠隔再発
1例肺合併症で死亡,3例(23%)再発にて死亡,3例(23%)ED
6例(46%)NED

結論

45GyのIMRTでの治療は有効であったが,肺の治療関連合併症には注意が必要である。

コメント

EPP後の片側全胸郭IMRTについては2003年MDACCからの報告以降胸膜悪性中皮腫治療のトピックスとなっている。片側全胸郭照射を行うに際しては心臓,健側肺,肝臓,腎臓,脊髄などの重要なOARが多く,IMRTでの治療は良好な線量分布がえられ,極めて魅力的な治療法と考えられた。しかし,2006年にHarvardからEPP後の片側全胸郭IMRTを施行した13例中6例がG5の肺合併症をきたしたという報告は衝撃をあたえた。彼らは肺合併症についてV20のみでなく,平均線量やV5などの低線量の評価もするべきだと報告した。それに対しMDACC は2007年に十分注意すればそれほど問題なく治療できると反論し,V20が最も重要な因子であると報告している。しかし,彼らの報告でも肺関連疾患で死亡した症例が63例中6例(9.5%)いた。今回のDukeの報告はMDACCの報告を追試したものであるが,それでも13例中1例(7.7%)のG5症例がある。彼らは片側肺の平均線量を8-10Gy以下,V20を4-10%以下,V5を75%以下にすることを推奨している。

片側全胸郭照射をIMRTで行うことは良好な線量分布のために極めて魅力的な治療法と思われる。ただ,患側肺の全摘後であり,肺の容積低下は放射線治療後の肺合併症の重要な危険因子の一つである。今後の健側肺の評価方法の確立が待たれるところである。


(副島 俊典)

top