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No.79
東アジア地域固有の III期およびIV期上咽頭癌に対する、放射線治療単独と化学放射線療法との比較試験

Randomized trial of radiotherapy versus concurrent chemoradiotherapy followed by adjuvant chemotherapy in patients with American Joint Committee on Cancer/International Union against cancer stage III and IV nasopharyngeal cancer of the endemic variety

Wee J, Tan EH, Tai BC, et al.
J Clin Oncol. 23 (27):6730-6738, 2005

目的

上咽頭癌に対する Intergroup 00-99 Trial は、放射線治療単独よりも化学放射線療法が有効であることを示した。しかしながら、東アジアでは放射線治療単独でもかなりの好成績を達成していること、また東アジアでは90%以上の症例で組織型が非角化型(主にWHO type III)であるのに対して上記トライアルでは約 25% が角化型(WHO type I)であったこと、などから、00-99を応用することは東アジアでは議論の余地があった。そこでこのスタディの目的は、東アジア地域固有の上咽頭癌を対象として 00-99 Trial の結果を確認することである。

方法

1997年から2003年にかけてシンガポールにおいて、221人のIII-IV期上咽頭癌の患者(組織型は WHO type II or IIIのみ、M0に限る)を対象に、以下の2群間で無作為比較試験を行った。

  • RT群:放射線治療単独(2.0Gy 35回、7週)(n=110)
  • CRT群:化学放射線治療(n=111)

化学療法は、00-99 Trial を少し変更した以下である。
同時併用CDDP 25mg/m2/day x 4days/week on week 1,4,7 および Adjuvant(CDDP 20mg/m2/day + FU 1000mg/m2/day)× 4days/week on week 11,15,19 Primary end point は生存率、その他の end points は遠隔転移と無病生存率である。経過観察期間は中央値で 3.2年。

結果

2年生存率はRT群 ? CRT群においてそれぞれ78% - 85% 、3年生存率は 同様に 65% - 80% であった。遠隔転移は RT群、CRT群でそれぞれ 38例、18例であった。RT群では、照射が完遂されたものは 105/110例であり、CRT群で同時併用化学療法が3サイクル施行されたものは 71%, アジュバント化学療法が3サイクル施行されたものは 57%であった。全体の 48% で grade 3 以上の有害事象を経験した。化学療法は、もともとの 00-99 を変更して CDDP を4日に分割したが、有害事象はさほど減少していなかった。

結論

このスタディで、地域固有の上咽頭癌においても Intergroup 00-99 の結果が確認され応用可能であることが示された。また化学療法が遠隔転移の制御率を改善することが確認された。

コメント

東アジア発生の上咽頭癌においても同時併用化学療法がかなりの差をもって有効であることが示されました。一方、この化学療法を全例に行うことは大変だと以前から思っていましたが、この論文でも化学療法を完遂できたのは 28/111例であって、その内容は 「有害事象により化学療法を減らした。」「これ以上の化学療法が拒否された。」「投与の時期を計算まちがいした。」「CDDPのかわりに paclitaxel にした。」「線量は 62Gy で終った。」「放射線が 2週先行した。」「35例ではアジュバントはまったく行われなかった。」 などと書いてあるのを読むと、少しほっとしてしまいました。


(岡嶋 馨)

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