No.108
化学放射線療法後切除と化学放射線療法単独との比較: FFCD 9102
Chemoradiation followed by surgery compared with chemoradiation alone in squamous cancer of the esophagus: FFCD 9102.
Bedenne L, Michel P, et al
J Clin Oncol 25:1160-1168, 2007
目的
比較試験ではないが食道癌に対する放射線化学療法は手術と同等であることが示唆されている。そこで局所進行食道癌に対する放射線化学療法により奏効した症例に限局して放射線化学療法単独と放射線化学療法後、切除併用の2群でランダム化比較試験を行った。
対象および方法
対象は手術可能なT3N0-1M0胸部食道癌。
2コースのCDDP+5FUによる化療と照射(通常分割法46Gy/4.5週 またはスプリット法15Gy/#1-5+15Gy/#22-26)を行い、奏効(CR+PR)した例でさらなる治療(化療/照射あるいは切除)可能症例に対して、A群:切除 またはB群:放射線化学療法の続行(3コースのCDDP+5FUによる化療+照射 通常分割20Gy または15Gyのスプリット)の2群に無作為に振りわけられた。
(1999年1月よりスプリット法は許容されなくなり、通常分割法のみの照射法にprotocol変更)
結果
444人が参加し、放射線化学療法に奏効し振り分けられたのは259人。230人(89%)は扁平上皮癌で、残りの11%は腺癌であった。
登録時からの2年生存率はA群:切除群で34%, B群:非切除群で40%(ハザード比0.90、調整危険率0.44)で差がなかった。
生存期間中央値はそれぞれ17.7ヶ月と19.3ヶ月であった。2年局所制御率はA群で66.4%, B群57.0%であった。
ただしステントを必要とした割合はそれぞれ5%と32%で切除群で有意に低かった(p<0.001)。
3ヶ月以内の死亡率は切除群で9.3%, 非切除群で0.8%であり、有意差がみられた(p=0.002)。また累積入院日数も68日間と52日間と有意差がみられた。
結論
進行胸部食道癌、特に扁平上皮癌では放射線化学療法に奏効すればさらに続行すればよく、切除術を加えても利益はない。
コメント
日本でJCOG9906の成果などを受けて進行食道癌に対する放射線化学療法の有用性が認識されてきているが、PDQなどの欧米のガイドラインをみると手術が標準治療とされている。米国では扁平上皮癌が40%ほどであり、腺癌の比率が高いことも関係していると思われる。
2005年にもStahl Mら(J Clin Oncol 23:2310-7, 2005)はT3-4N0-1扁平上皮癌に対する放射線化学療法により奏効した症例は手術を加えても加えなくても良いが、非奏効例には切除が予後を改善するとしている。今回の報告も同様な結果であるが、追跡期間中央値は4年弱とやや短いが、症例数が多い。
同時併用する最適薬剤(第3世代)や最適線量(INT0123など)を探る努力がまだまだ必要ではあるが、放射線腫瘍医としては進行胸部食道癌に対する治療指針を力強く指し示してくれる論文と思われる。
今後エビデンスが積み重なることより、Cochrane Database of Systematic Reviewsにも chemoradiation vs chemoradiation followed by surgery の項目が取り上げられることを期待する。
(関口 建次)