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No.132
限局期 aggressive lymphomaに対し、短期R-CHOP 後に放射線治療を行った第二相試験(SWOG0014)の結果報告

Phase II study of rituximab plus three cycles of CHOP and involved-field radiotherapy for patients with limited-stage aggressive B-cell lymphoma: Southwest Oncology Group study 0014

Persky DO, Unger JM, Spier CM, et al.
J Clin Oncol 26(14):2258-2263, 2008

目的

限局期aggressive lymphomaに対する標準治療である、CHOP療法3サイクル+放射線治療にリツキサンを併用するメリットについて検討する。

対象と方法

CD20陽性であるB細胞性の限局期非ホジキンリンパ腫であり、かつstage-modified IPIが1以上である患者に対し、CHOP(cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, prednizone) 3サイクルに加え、4サイクルのリツキサンを同時期に投与後、involved fieldに対し40から46 Gy照射する(R-CHOP + IFRT)。primary endpointは2年無増悪生存率。

結果

60例が登録され、55例が予定通りに治療を完遂出来た。観察期間の中央値は5.3年であった。2年無増悪生存率は93%、4年無増悪生存率は88%であった。2年全生存率は95%、4年全生存率は92%であった。リツキサンの上乗せ効果について検討するために、CHOP単独療法とCHOP療法3サイクル+放射線治療を比較したSWOG 8736の登録症例中、CHOP療法3サイクル+放射線治療に割り付けられ、かつ今回の試験の患者背景に適合する症例群をhistorical control groupとして抽出した。このhistorical control groupでは2年無増悪生存率は85%、4年無増悪生存率は78%、2年全生存率は93%、4年全生存率は88%であった。

結論

R-CHOP + IFRTは有望な治療であり、更なる検討を行う価値がある。

コメント

進行期のCD20陽性非ホジキンリンパ腫においては、CHOP療法にリツキサンを併用するメリットが証明されR-CHOPが標準的治療として確立しています。
本試験は限局期非ホジキンリンパ腫に対するR-CHOP + IFRTを評価する初の第二相試験です。この試験では予後不良因子がない症例を対象から外していますが、これは予後不良因子がない症例の従来治療の成績が極めて良好であり、更なる向上の余地がないためです。
本試験の結果はhistorical controlと比べて良好でありますが、いくつかの問題点も提起しています。ひとつは進行期のように著しい成績の向上が得られなかった点です。これを説明する理由として、筆者は考察の中で進行期症例と限局期症例の生物学的な違いを挙げています。限局期症例では、リツキサンの恩恵が大きいgerminal center originのphenotypeの占める割合が進行期症例に比べて少ないと報告されています。筆者は、この差が本試験において思ったほど治療成績が伸びなかった原因かもしれないと述べています。本試験の生存率曲線はプラトーに達しておらず、遅発性の再発が見られている点も気になるところです。限局期非ホジキンリンパ腫に対するR-CHOP + IFRTはすでに我が国の日常臨床において広く行われています。しかしリツキサンの上乗せ効果については必ずしも明確なコンセンサスが得られてはおらず、今後の展開を見守る必要があるものと思われました。


(信州大・小岩井 慶一郎)

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