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公益社団法人日本放射線腫瘍学会

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No.88
世界の癌の原因: 9個の危険因子の検討

Causes of cancer in the world: comparative risk assessment of nine behavioural and environmental risk factors

Goodarz Danaei, Stephan Vander Hoom, Alan D Lopez et al
Lancet 366:1784-1793, 2005

はじめに

癌による死亡を減少させることに関して言えば、他の慢性疾患と同様、癌の治療法の進歩は残念ながら効果的とは言えず、また健康診断の有効性もほとんどない。現段階では、生活習慣や生活環境を改善することが癌死を減少させる唯一の方法である。この報告では2001年の7つの世界的なデータバンクにおいて、9個の危険因子(下記1)が12種類の癌(下記2)による死亡にいかに関与するかを検討した。

方法

Conparative Risk Assesment Projectからの報告、最近報告された危険因子、さらに年齢・性・地域差による相対危険度を検討した。危険因子を持つ個々のケースに付きWHOの癌死のデータをあわせて、いかなる危険因子が癌による死亡にいかに関与するかを検討した。

結果

2001年には世界で700万人の癌死が報告されているが、243万人(35%)が9個の危険因子に関連がある。この中で、76万人は高所得国、167万人は中-低所得国である。中-低所得国には、ヨーロッパと中央アジアがこれらの危険因子に関連した癌死において最も高い割合(39%)を占めていた。これらの危険因子に関連した死亡は、男性160万人、女性83万人であった。喫煙、飲酒、野菜果物低摂取が全世界および中-低所得国での癌死の最大の危険因子であった。高所得国では、喫煙、飲酒、加体重・肥満が最も重要な癌の原因であった。ヒトパピローマウイルスの性交感染が中-低所得国の女性における子宮頚癌の最大の危険因子であった。
解釈:いくつかの重要な生活習慣および生活環境因子の改善が、癌による死亡を低減させる可能性がある。

<記1>

  1. Diet and physical inactivity
  2. Overweight and obesity
  3. Low fruit and vegetable intake
  4. Physical inactivity
    Addictive substances
  5. Smoking
  6. Alcohol use
    Sexual and reproductive health
  7. Unsafe sex
  8. Environmental risks
  9. Urban pollution
  10. Indoor smoke from household use of solid fuels
    Other selected risks
  11. Contaminated injections in health-care settings

<記2>

  1. Mouth and oropharynx cancers
  2. Oesophageal cancer
  3. Stomach cancer
  4. Colon and rectum cancers
  5. Liver cancer
  6. Pancreatic cancer
  7. Trachea, bronchus, and lung cancers
  8. Breast cancer
  9. Cervix uteri cancer
  10. Corpus uteri cancer
  11. Bladder cancer
  12. Leukemia


(茂松 直之)

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