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公益社団法人日本放射線腫瘍学会

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No.202
リンパ節転移陰性の早期乳癌に対する乳房温存療法における、手術と放射線治療との間隔: 17年の経過観察の結果と再発形式

Time interval from breast-conserving surgery to breast irradiation in early stage node-negative breast cancer: 17-year follow-up results and pattern of recurrence

Vujovic O, Yu E, Cherian A, et al.

Int J Rad Oncol Biol Phys 2015, 91(2):319-324.

背景

乳房温存療法の治療成績に対する、手術と放射線治療との間隔(SRI)の影響を前回11年の観察時点で報告した(Vujovic O, IJROBP 2006)。今回は 17年の経過観察の結果を報告。

目的

早期乳癌に対する乳房温存療法において、SRIと再発率との関係を検討。

対称

1985-1992年に自施設で全乳房照射を行った 566例の早期乳癌(T1-3, N0)。年齢中央値 60歳。化学療法なし。

方法

・SRI により、以下に分類:

① 0-8週(n=201)②8-12週(n=233)③12-16週(n=91)④16週以上(n=41)

・以下を検討: 局所再発(LR)、無病生存(DFS)、無転移生存、死因調整生存率(CSS)、全生存(OS)

・全体の経過観察期間 17.4年(中央値)、閉経前乳癌 170例(29.9%)、T1症例 414例(73.1%)、断端陰性 494例(87.3%)、ER陽性 340例(60.1%)、PR 陽性 305例(53.9%)

(これらに、上記①―④の各群で有意差なし: p=.67)

・放射線治療開始の遅れの理由: 1)他施設への紹介の遅れが最多(約半数) 2)予約の混雑。

結果

・全体のCSS は 92% (5年)、84.6% (10年)、79.8% (15年)

・無病生存へのSRI の影響は、単変量解析で有意差なし(HR 0.98, p=.326)

・同様に、多変量解析で優位であったのは腫瘍径 (p<.001)、PR 陽性 (p=.010)、とおよびリンパ管侵襲 (p=.005) のみ

・化学療法がない場合、経過観察期間中常に局所再発は増加 (1%/年)

結論

リンパ節転移陰性乳癌症例に対する乳房温存症例において、手術と放射線治療との間隔は、16週までは治療成績に影響しない。

コメント

乳房温存療法の術後、放射線治療の開始時期に関しては乳癌学会のガイドラインでは20週までの開始が推奨されている。同様に、カナダのガイドラインでは12週まで、となっている。エビデンスは確立していないが、開始を遅らせる理論的な長所もないので、できるだけ早期の開始が望ましい。

放射線治療開始の遅れによる局所制御の低下もいくつか報告されているが、これまではいずれも経過観察期間が10年程度以内のものであった。経過観察期間はこの報告が最長であるので、開始時期の遅れの影響がなかったとの結論はありがたい。


Evidence level 3

PMID: 25636757

(近畿大奈良・岡嶋 馨)

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