No.110
早期子宮内膜癌に対する術後照射 - SGO会員へのアンケート
The use of adjuvant radiation therapy in early endometrial cancer by members of the Society of Gynecologic Oncologists in 2005.
Naumann RW and Coleman RL.
Gynecol Oncol 105:7-12, 2007
目的
米国Society of Gynecologic Oncologists (SGO)のメンバーにおける早期子宮体癌の現在の診療パターンを明らかにする。
方法
早期子宮体癌に対する術後照射の適用状況についての調査を行った。調査対象者自らが手術を行った患者及び術後コンサルトされた患者について、手術内容・Surgical staging適用状況・術後照射適用状況を調査し、結果を前回調査(1999年)と比較した。
結果
調査対象者のPractice demographicsは前回調査と同じであった。前回調査と比較して、Surgical stagingを行う割合が増加していた(71% vs. 48%; P<0.0001)。多くの調査対象者は本疾患に対する根治的手術とは完全なリンパ節廓清術を含むものと考え(76% vs. 44%; P<0.0001)、同時にリンパ節廓清術は治療的意味を持つと回答していた(71% vs. 66%; P=0.04)。約半数で腹腔鏡を用いたStagingを行うと回答していた。前回調査と比較して、術後照射を推奨するとの回答は有意に低下していた。術後照射の適応と考えられた場合には、外部照射(骨盤照射)ではなく、腟断端への腔内照射を適用するとの回答がほとんどであった。術後コンサルトされた患者においては、もしSurgical stagingが行われていない場合には追加の手術的な介入を行うと回答していた。
結論
早期子宮体癌治療において、完全なリンパ節廓清と腹腔鏡の使用の増加、骨盤照射適用の減少が観察された。
早期子宮体癌に対する、米国婦人科腫瘍医の診療方針の調査結果である。前回調査(1999年)と比較して術後照射、特に骨盤照射の適用を考える婦人科腫瘍が減少したとの結果が示された。骨盤内リンパ節廓清が行われた中リスク群の子宮体癌(I, II期)において、術後骨盤照射が骨盤内再発は有意に減少させたが、生存には寄与しなかったとのRCT報告(GOG#99、2004年)が米国の実地臨床に浸透した結果と考えられる。この意味においては正しい方向性を示す結果と評価される。
我が国では、III、IV期症例(高リスク群)に対する術後照射(全腹部照射)と化学療法とを比較したGOG #122の結果(化学療法群で有意に全生存が良好)を受けて、すべてのリスク群に対して術後照射からいきなり術後化学療法にシフトする動きが見られる
。
高リスク群で証明されたことが中リスク群でも同様かどうかは、改めてRCTにて検証される必要がある。今年のASCOにおいて、中リスク群に関して術後照射と術後照射+化学療法とを比較したRCTの結果が発表され、後者が有意に優れていることが示された。
すなわち中リスク群において、術後照射に化学療法を加えることにより予後が向上することが証明された。今後は、中等度リスク群に対する術後照射+化学療法と術後化学療法を比較するRCTが必要と考えられる。同時に我々放射線腫瘍医は、晩期合併症を軽減するための照射方法を吟味していく必要がある。
一つこの論文で気になったことは、最近よくみられる「アンケート方式」による集計である。特にこの研究ではアンケートを依頼して回収されたのはたったの29%であったとしている。はたして全体の3割にも満たないサンプルを解析した結果が、国全体の平均(National average)を示すことができるのであろうか。
(戸板 孝文)