ホーム > Journal Club > 女性の低リスク浸潤性乳癌および非浸潤性乳癌に対する乳房温存術後放射線療法における、小線源治療による加速乳房部分照射の全乳房照射に対する5年成績の比較:無作為化第3相非劣性試験

No.215
女性の低リスク浸潤性乳癌および非浸潤性乳癌に対する乳房温存術後放射線療法における、小線源治療による加速乳房部分照射の全乳房照射に対する5年成績の比較:無作為化第3相非劣性試験

5-year results of accelerated partial breast irradiation using sole interstitial multicenter brachytherapy versus whole-breast irradiation with boost after breast-conserving surgery for low-risk invasive and in-situ carcinoma of the female breast: a randomized, phase 3, non-inferiority trial.

Strnad V, Ott OJ, Hildebrandt G, et al.
Groupe Eoropeen de Curietherapie of European Society for Radiotherapy and Oncology (GEC-ESTRO)
Lancet 2016, 387(10015): 229-238

背景

0, I, IIA期乳癌に対する乳房温存術後の放射線療法として、小線源を用いた加速乳房部分照射(APBI)が、5年間の成績において従来の全乳房照射と比較して非劣勢であることを確認した。

目的

APBIには、短期間に高線量の放射線治療が行えることと、正常組織への放射線量を減らせるというメリットがある。0, I, IIA期乳がんに対する乳房温存術後のAPBIが全乳房照射に5年成績で非劣勢であるかどうかを検証することを目的として、無作為化第III相試験を行った。

対象

2004年4月20日から2009年7月30日までの間に、低リスク浸潤性乳癌および非浸潤性乳癌の女性を対象とし欧州7カ国の16施設から1184例を登録した。

方法

1184例のうち551例が腫瘍床へのブースト照射ありで全乳房照射を受けた。また、633例がマルチカテーテルでの組織内照射を用いたAPBIを受けた。1次エンドポイントは局所再発とした。

結果

5年間のフォローアップで、APBIを受けた群では9例に、全乳房照射を受けた群では5例に局所再発を認めた。5年間での累積局所再発率は、APBI群で1.44%、全乳房照射群で0.92%となり、2群の間での差は0.52%、95% CIは-0.72 to 1.75、p=0.42で、APBIの全乳房照射に対する非劣勢が確認された。Grade 4の晩期有害事象は認めなかった。5年間でのGrade 2ないし3の皮膚への晩期有害事象の発生率は、APBI群で3.2%、全乳房照射群で5.7%となり有意差はなかった。皮下組織に関しては、APBI群で7.6%、全乳房照射群で6.3%となり、やはり有意差はなかった。Grade 3の線維化を全乳房照射群の1例に認めたが、APBI群では認めなかった。

結論

生存率に関しても、APBI群と全乳房照射群の5年無病生存率は、それぞれ95.0%、94.5%となり、5年全生存率は、それぞれ97.3%, 95.6%であり、いずれも有意差は認めなかった。
以上のことから、0, I, IIA期の乳癌に対する乳房温存術後の放射線治療として、小線源を用いたAPBIが従来の全乳房照射に比べて、非劣勢であることが確認された。

コメント

  乳房温存術後の照射法として加速乳房部分照射(APBI)は勧められるか、という問題に関して、わが国の乳癌診療ガイドライン治療編では推奨グレードC2となっており、エビデンスがまだ十分ではなく基本的に勧められない。実践する際には臨床試験の枠組みで施行されるべきである、とされている。
   乳房温存療法における放射線療法の有用性を示した臨床試験の結果より,乳房温存療法後の温存乳房内再発の約70%はもとの腫瘍床の周辺から生じること,およびそれ以外の部位からの再発は対側乳癌の発生と時期および頻度が類似することが明らかになり,全乳房ではなく腫瘍床のみを対象とした放射線療法の可能性が検討された。照射野を縮小することにより,大線量小分割で短期間に照射を終えることも可能になり,APBIとして欧米で臨床導入が開始された。具体的な方法としては小線源を用いた組織内照射や腔内照射,術中照射,三次元外照射が用いられている。
 ランダム化比較試験を含む初期の報告では,対象にAPBIには不適切な症例を含んでいたため,一般的な全乳房照射の成績に比べて明らかに不良であったが、適格条件を厳しくした研究では用いる方法にかかわらずおおむね良好な温存乳房内制御と整容性が得られている。
 その後いくつかのランダム化比較試験が終了あるいは実施中で,APBIの有用性が報告されているが、いずれも観察期間が十分とはいえず,さらなる経過観察が必要である。
 現在,RTOG/NSABPでランダム化比較試験が進行中であり,その結果が明らかになるまでは標準治療として全乳房照射が勧められる。米国放射線腫瘍学会(ASTRO)のコンセンサスでもAPBIに適している規準として,60歳以上、pT1N0の単発病変で切除マージン2 mm以上,ER陽性などを挙げているが,一方でAPBIに関心のある患者はすべて臨床試験に参加することを強く勧めている。また,わが国にAPBIを導入するにあたっては,これらの問題以外に欧米の患者との体格や乳房サイズの差による技術的な問題についてさらなる検討が必要である、とのことである。 (兵庫県立加古川医療センター・小川恭弘)
 
Evidence level 2
PMID: 26494415

(兵庫県立加古川医療センター・小川恭弘)

JASTRO認定施設

JASTRO認定施設

広報情報