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No.213
転移性メラノーマに対するCTLA-4阻害の治療反応性とがんゲノムの相関

Genomic correlates of response to CTLA-4 blockade in metastatic melanoma

Van Allen EM, Miao D, Schilling B, et al.
Science. 2015 Oct 9;350(6257):207-11.

背景

免疫チェックポイントを阻害する抗CTLA-4抗 体(イピリムマブ)の登場で転移性メラノーマに対する治療は劇的に進歩したが、奏効例は限定的であり、治療効果を規定する因子は不明な点が多い。大規模臨 床コホートに対する次世代シークエンサーを用いた包括的ゲノム解析を行うことで、イピリムマブ感受性に寄与する腫瘍特異的変異抗原(Neoantigen)および腫瘍微小環境(腫瘍免疫)の特徴を示し、有用な治療効果予測因子を明らかにするために本研究を行った。

対象と方法

イピリムマブが投与された転移性メラノーマ患者110例を、RECIST・全生存・無増悪生存期間に基づき、「奏効群:27例」、「耐性群:73例」、「増悪したが長期生存群:10例」の3群に分類。
各症例から採取した、治療前の生検検体と正常組織由来のDNA/RNAを用いて、以下の解析を行い各群で比較した。
・全エキソン解析: 塩基配列を解読することで癌の体細胞変異を検出。さらに各症例で抗原提示に必要なHLA型を評価し、体細胞変異の中でも癌抗原として機能するNeoantigenを予測した。
・RNAシークエンス(癌検体40人分のみ):腫瘍免疫に関与する遺伝子発現を評価した。

結果

良好なイピリムマブ治療効果と相関があった転移性メラノーマの特徴は、①体細胞変異数が多く、②Neoantigen数が過剰、③細胞傷害性マーカー(granzyme A, perforin)やCTLA-4・PD-L2高発現であった。
全110症例で計75000種類以上のNeoantigenが同定された。このうち28種類だけが「奏効群」のみで2例以上に検出されたが、必ずしもHLA型は一致していなかった。共通の特徴もなく、Neoantigenのペプチド配列は治療感受性を予測できなかった。
小規模研究(Snyder A, et al. N Engl J Med 2014の64例等)で報告された予測因子である、①PD-1・PD-L1発現、②特定遺伝子の体細胞変異の有無(BRAFやNRAS変異等)、③効果と関連があるとされているテトラペプチド配列、④HLAクラスI (HLA-A, HLA-B, HLA-C)サブタイプ別の発現は、本研究コホートでは治療効果と相関がなかった。

結論

体細胞変異が多く免疫原性が高い転移性メラノーマは、イピリムマブ感受性が良好であった。しかし、Neoantigenのペプチド配列等の決定的な治療効果予測因子は見つからず、さらなる研究が必要である。

コメント

昨年、転移性メラノーマ患者に対する放射線治療・イピリムマブ併用の第一相試験が報告された(Twyman-Saint Victor C, et al. Nature 2015)。放射線照射が腫瘍に浸潤したT細胞の受容体多様性を広げることで抗腫瘍効果を増強することが明らかとなり、腫瘍免疫への関心が益々高まっている。適切ながん診療を実施する上で、免疫チェックポイント阻害薬の作用を理解することは、放射線腫瘍医として重要だろう。
本研究の特色は、臨床研究・ゲノム医学・免疫学を併用したトランスレーショナル(分野横断的)な手法を用いた点である。遺伝子変異数が多い腫瘍は、HLAクラスIに抗原提示される腫瘍特異的変異抗原(Neoantigen)が多いために免疫原性が高く、抗原を認識する細胞傷害性T細胞が多数腫瘍内に存在する。このことが免疫チェックポイント阻害薬の作用機序に重要であると考えられているが、次世代シークエンサーの技術革新により、実際の臨床例で検証可能となった。「耐性群」のみに、イピリムマブ投与前の初回治療としてBRAF阻害剤投与例が存在する、臨床病期進行例が多い等の問題もあるが、100例以上で全エキソン解析を実施した苦労は想像に難くなく、小規模研究における報告の一部は再現された。残念ながら治療効果を規定するNeoantigenの ペプチド配列等の決定的な発見はできず、腫瘍免疫・免疫応答は個人差が大きいことも明らかとなった。このような多様で複雑な癌の病態を考慮すると、大規模 臨床試験の効いた、効かなかったという結果のみに目を向けるのではなく、目の前の一例一例を詳細に振り返りエビデンスを蓄積していくことも、癌の病態解明 や放射線治療成績の向上に繋がると考える。

Evidence Level 3
PMID: 26359337

(九州大学病院別府病院 平田秀成)

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