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No.208
血管新生阻害薬と定位放射線治療の併用における消化管毒性(総説)

Gastrointestinal toxicities with combined antiangiogenic and stereotactic body radiation therapy.

Pollom EL, Deng L, Pai RK, et al.
Int J Radiation Oncol Biol Phys 2015; 92(3): 568-576

背景

1970年代にvascular endothelial growth factor (VEGF)シグナル伝達経路に多くが依存する血管新生が腫瘍の成長に重要であることが明らかになってから、数多くの血管新生阻害薬が臨床試験で研究され、現在も続いている。多くの薬剤で臨床での使用が承認されたが、単独での使用では毒性や耐性の獲得、使用中止後に起こる急速な再度の血管新生などにより有効性が限られるため、抗腫瘍活性を高める目的で既存の治療法に組み込まれてきた。

臨床での使用が増えるとともに、当初は予期されていなかった高血圧、出血、血栓塞栓症や、1-2%の消化管穿孔といった血管関連の毒性が明らかになってきた。また、血管新生阻害薬と通常分割照射法の放射線治療の併用において忍容性は良好との報告がある一方で、消化管毒性が増加したとの報告もある。

定位放射線治療(SBRT)は腹部臓器に対しても急速に適応が拡大しているが、血管新生阻害薬との併用による予期せぬ遅発性消化管毒性も報告されるようになった。

SBRTと血管新生阻害薬による消化管毒性の臨床報告

PubMedを用いて、主としてSBRTと血管新生阻害薬の併用でgrade 3以上の消化管毒性を報告した英文論文を検索した。

Petersらは腎細胞癌腰椎転移に対しsorafenib開始から5週、中断から2日後に前後対向2門照射(8 Gy1回)を行い、照射終了後3日でsorafenibを再開したところ、照射1週間後に照射野内の大腸に多発穿孔が生じ死亡した症例を報告している。

消化管毒性は放射線治療の実施時期が血管新生阻害薬の前および後いずれの場合も報告されている。ドイツからの報告では、bevacizumabが投与された33例のうち腹部あるいは骨盤部に照射歴がある3例全てで重篤な消化管毒性を生じている(直腸癌の術後化学放射線療法または術前放射線治療を受けた2例では照射野内にgrade3の虚血性直腸炎、右腸骨転移への寡分割照射(4 Gy x 7回)を受けた1例では、4か月後に隔週投与で開始されたbevacizumabの2回目の投与翌日に照射野内にgrade5の盲腸穿孔)。

StephansらはSBRT後の血管新生阻害薬の投与による食道瘻を報告している。PTV辺縁が食道から2cm以内であった52例のうち2例で照射野内に食道瘻が生じた。いずれもSBRT後2ヶ月以内に補助療法として血管新生阻害薬を投与された患者であり、投与されていない患者で食道瘻は生じなかった。

Barneyらの報告では、SBRT終了後13ヶ月以内に血管新生阻害薬を投与された20例中7例(35%)で照射野内にgrade3-5の消化管潰瘍あるいは穿孔が生じたが、投与されていない56例では重篤な消化管障害は生じていない。

Dawsonらによる進行肝細胞癌に対するSBRTの第I相試験の結果では、sorafenibとの同時併用において、照射体積が大きい(肝臓のVeff30-60%に対し30-33 Gy/6分割)3例中2例で照射野内にgrade3の大腸出血とgrade4の腸閉塞を認め、その後の症例ではsorafenibを減量している。

SBRTと血管新生阻害薬併用のタイミング

血管新生阻害薬とSBRTとの最適な併用タイミング、期間および用量は不明である。また、血管新生阻害薬投与とSBRT実施までの間にどの程度の休薬期間が必要か否かも不明であるが、薬剤の半減期に依存する可能性がある。しかしながら、消化管毒性がSBRTの17か月後に生じたとの報告があり、相加的な影響が半減期とは関係なく生じる可能性もある。より多くの情報が明らかになるまで、血管新生阻害薬とSBRTとの併用は同時併用、順次併用のいずれであっても慎重に行うべきである。

血管新生阻害薬の選択

bevacizumabやsorafenib、sunitinbなど、VEGFシグナル伝達経路を標的とする多くの薬剤が開発されてきたが、それぞれ標的とする受容体、受容体親和性あるいは毒性に違いがあり、放射線治療との併用においていずれかが他の薬剤よりも安全であるかどうかは今後の研究を待つ必要がある。しかしながらbevacizumabは恐らくその特徴的な作用機序により他の血管新生阻害薬よりも消化管毒性が強いように思われる。

放射線治療の最適化

SBRT
単独治療においては消化管毒性に対する一定の線量制約が報告されているが、血管新生阻害薬の併用に関する報告はさまざまで解釈が容易ではない。現時点で血管新生阻害薬併用時の推奨される線量制約は定まっておらず、毒性を報告し追跡する患者登録システムが必要である。当分の間は、SBRTと血管新生阻害薬の同時併用、あるいはSBRT後に血管新生阻害薬を使用する可能性がある場合には、SBRTは分割照射とし、かつ有効性が期待できる最低限の生物学的効果線量(BED)を用い、確立されている正常組織の線量制約を遵守することを推奨する。

コメント

本論文は、多くの分子標的薬剤が開発され臨床に導入されている現状において、血管新生阻害薬と放射線治療の併用による重篤な消化管毒性をまとめた重要な総説である。文字数の関係で詳細まで示すことはできなかったが、原文および引用されている文献を確認されることをお勧めしたい。あわせてNiyaziらの総説(Niyazi et al. Radiotherapy and “new” drugs-new side effects? Radiat Oncol 2011;6:177)も参照されたい。情報が不十分な現在、承認された使用法あるいは臨床試験を除いて、日常臨床においては重篤な毒性が頻発することがないよう、毒性と有効性のバランスを考慮した慎重な対応が望まれる。

Evidence level 3a
PMID: 26068491

(越谷市立病院 石倉 聡/大船中央病院 佐貫直子)

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