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No.191
肝がんを対象とした体幹部定位照射の多施設プランニング -多施設臨床試験へのベ ンチマーク

Multi-institutional comparison of treatment planning using stereotactic ablative body radiotherapy for hepatocellular carcinoma - benchmark for a prospective multi-institutional study

Takahisa Eriguchi, Atsuya Takeda, Yohei Oku,et al.
Radiation oncology .2013,8:113

目的

肝細胞がん(HCC)体幹部定位照射(Stereotactic ablative body radiotherapy:SABR)の多施設前向き研究のため、プランニングスタディーを行い、事前に施設間のばらつきを評価した。

方法

4施設が参加し、肝細胞がん4症例につき各施設3種類の治療計画を作成した。
 
治療計画に用いる画像は同一のものとし、エネルギーは6MVX線、計算アルゴリズムの違いは容認するものとした。
 
①各施設のプロトコールで提示された同一症例4例を計画
 
②次にplan1として、各施設のプロトコールに40Gy/5fr D95処方を指示
 
③さらにplan2として、PTV辺縁がPTV内のMaxDoseの70%線量ラインで囲まれるように照射野を作成し、70%線量ラインに40Gy/5fr D95処方を指示
 
評価はDVHで行いPTVのD95や平均線量(D50)、平均正常肝線量(MLD)、肝20Gy以上線量(V20 normal liver)、線量不均一性(homogeneity index:HI)などで比較を行った。

結果

①各施設のプロトコールでは、回転原体2施設と、固定多門2施設があり、PTV D95は43.5Gy( 41.1 - 46.5 Gy ) 平均線量は48.4Gy( 43.6 - 51.2 Gy ) 肝V20と正常肝線量は15.9%( 12.2 - 18.9% ),10.8Gy( 8.8-12.5Gy )と線量にばらつきが存在した。
 
施設Aは、PTV maxの70%線量ラインを処方点としており、施設B〜Dではisocenterを処方点としていた。
 
②処方線量を指示したplan1では, 施設B〜Dでは、PTV内の線量均一性が重要視され、PTV投与線量のばらつきは小さかったが、PTV の平均線量は均一性を重視していない施設Aが一番高く、同時に正常肝線量は低値であった。
 
③Plan2では施設Aのように70%線量ライン処方を行うと、PTV平均線量を51.9Gy(51.0 - 53.1 Gy )と高めながら、4施設の線量のばらつきも小さくできた。この方法ではPTV内の線量均一性は悪くなるが、施設間のばらつきも減り、正常肝のV20も12.3%( 10.4-13.2 % )と他の2つのplanよりも小さくなった。

結論

HCCの体幹部定位照射では施設間に顕著な差が存在した。PTV辺縁に一致させた70%線量ラインに処方した際には、処方規約も満たされ、施設間のばらつきが大幅に減少した。多施設研究では参加施設が連携して詳細な線量規約を定めることが必要であり、QAプログラムとともに綿密に記載されたプロトコールは高品質で信頼性の高い結果につながっていく。

コメント

HCCへの体幹部定位照射( SBRT )は肺に比べてまだ普及していないが、近年HCCの局所治療に対して、一つの選択肢となってきている。この論文では4施設のHCCのSBRTプロトコールも記載されているが、CTの撮影方法からビームアレンジ、処方線量と各施設においてプロトコールも様々で、例え同じCT画像であってもそのままのプロトコールPlanでは、多施設試験で結果のばらつきが出てしまうことが分かる。
 
肺のSBRTでは、日本の多くの施設でPTV内の線量を均一にするように照射野を形成している。しかし、海外でのSBRTではPTV線量の均一性は重視されていない。今回、PTVの辺縁線量を70%線量ラインとなるように、MLCを調整しD95処方をした場合、PTV内の線量均一性は崩れるものの、PTV平均線量の増加、正常肝への線量低下が可能となったため、参加施設のミーティングにて、その線量投与方法を採用したようである。その結果、A以外の3施設でも70%線量ライン処方を固定多門等で試み、施設間格差が無くなった。
 
多施設共同臨床試験では施設間の処方に差が生じないことが重要である。この論文は実施予定であるHCCのSBRT臨床試験に対するベンチマークであり、放射線のQAプログラムとともに照射方法も細かく検討し、記載することで施設間の線量等のばらつきを小さくする過程を示した。こうしたすりあわせ作業が、信頼性の高い他施設臨床試験につながるものと考える。
 
医学物理士としてこのような多施設共同臨床試験に参加する場合、自施設にてplanの検証を行い、装置精度の確認を行う必要があり、通常臨床業務のレベルアップにもつながるものと考える。 (都立駒込・岡野智行)
 
 
Evidence level:  -
 
PMID: 23641879

(都立駒込・岡野智行)

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