第4回小線源部会(2002年) 


日 時2002 629日(土)9001600

場 所:広島大学医学部広仁会館 大会議室

世話人:広川 裕

               (PDFファイルはここをクリックして下さい。)

 

9:00-10:00   セッションI. 頭頸部癌 

 

(1) 透析患者口腔癌の小線源組織内照射

   東京医科歯科大放  張 彦彬,林 敬二,太田さや子,吉村亮一,渋谷 均

(2) 舌癌組織内照射におけるスペーサ使用のピットホール

   広島大歯放、放*  藤田 實,広川 裕*,木村智樹*,村上祐司*,権丈雅浩*

   伊藤勝陽*

(3) 頭頸部組織内照射における鉛ブロックの有効性について

   大阪成人病セ放治,国立大阪放*  大西剛史,能勢隆之,川辺清人,佐々木潤一,

   熊谷洋司,山根康彦,福島英治,松井 等,小泉雅彦,佐々木靖廣,西山謹司,

   吉田 謙*

(4) 組織内照射における線量投与精度の検討−ガラス線量計による測定
   大阪成人病セ放治,国立大阪放*  能勢隆之,小泉雅彦,大西剛史,佐々木潤一,

   川辺清人,西山謹司,吉田 謙*

 

10:00-11:00   セッションII. 骨盤内腫瘍

 

(5) セシウム針による婦人科領域の組織内照射
   新潟大放,歯放*  杉田 公,土田恵美子,笹本龍太,山ノ井忠良,益子典子*,

   勝良剛詞*

(6) 直腸癌術後局所再発・遺残に対する外部照射と小線源治療の併用治療の成績 
   和歌山医大放,2外*,麻酔**  岸 和史,梅本春生*,岡本一仁**,諏訪和宏,

   白井信太郎,石井清午,佐藤守男

(7) 骨盤内腫瘍に対する術中組織内照射チューブ刺入術

   群馬大放  桜井英幸,原島浩一,鈴木義行,石川 仁,清原浩樹,斉藤淳一,

   北本佳住,中山優子,山川通陸,長谷川正俊,中野隆史

(8) 骨盤組織内照射におけるテンプレート改善の試み

   国立大阪放,大阪成人病セ放治*  吉田 謙,能勢隆之*,大西剛史*,小泉雅彦*,

   御供政紀,西山謹司*

 

 

11:00-12:15   セッションIII. 症例報告・その他   

 

(9) 外面照射を施行した陰茎Bowen病の一例
   佐賀医大放,北九州医療セ放*  徳丸直郎,舛本博史*,工藤 祥

(10) セシウム針による立体刺入組織内照射にて治癒した進行舌癌の1例

   札幌医大放  晴山雅人,坂田耕一,大内 敦,永倉久泰,染谷正則,中田健生,

   佐藤大志

(11) 口蓋部病変に対する198Au grain刺入時に舌への照射防止装具を使用した症例と使

   用しなかった症例

   新潟大歯放,放*  益子典子,杉田 公*,土田恵美子*,笹本龍太*,林 孝文,

    勝良剛詞

(12) Patterns of Care Study (PCS)によるわが国の小線源治療の実態

   大阪成人病セ放治,九州大放*,大阪大保**,放医研***,国立がんセ放#,

   大阪大集放治##   小泉雅彦,中村和正*,手島昭樹**,佐藤眞一郎**,今井 敦#

   能勢隆之,井上俊彦##

(13) Ir-RALSの治療現場からの声−技術学会治療分科会アンケート2000年から学ぶ

   神奈川がんセ放技2  相川良弘

 

12:20-12:40   総会 (昼食を食べながら)

12:50-13:50   招待講演

 

北米での前立腺癌治療の動向

   カリフォルニア大泌尿器科  篠原勝人

13:50-14:50   セッションIV. 前立腺癌

 

(14) 前立腺組織内照射の基本技術

   東京医療セ放,埼玉医大放*   萬 篤憲,戸矢和仁,土器屋卓志*

(15) 限局性前立腺癌に対するCTガイド下刺入による高線量率イリジュウム組織内照射

   栃木がんセ放治  築山 巌,片野 進

(16) 前立腺癌高線量率組織内照射における最適化(optimization)プログラムについての検討

   静岡がんセ放治,大阪大学集放治*,  吉岡靖生,隅田伊織*,田中英一*,

   井上武宏*,井上俊彦*

(17) 限局性前立腺癌に対する外照射併用組織内照射治療成績−2年以上経過した51症例

   の検討
   川崎医大放治  平塚純一,河辺哲也,今城吉成

 

14:50-16:00 セッションV. 各種報告

 

(18) ヨーロッパ小線源治療の見学報告−リヨン・ウイーンに6ヶ月間滞在して

   静岡がんセ放治  吉岡靖生

(19) American Brachytherapy Society学会参加報告

   大阪大集放治  田中英一

(20) 厚生労働省がん研究助成金山下班の研究動向

   癌研附属放治  山下 孝

(21) イリジウム線源不明事故の経緯とそれから学ぶ事

   国立札幌放  西尾正道 

 

ご案内

 

I. 日時         平成14年6月29日(土) 9:00〜16:00

 

II. 会場  広島大学医学部 広仁(こうじん)会館 大会議室

広島市南区霞1丁目2-3 広島大学医学部キャンパス内

 

III. 参加の方へ

1. 受付: 6月29日(土) 8:30〜    広仁会館 1階ロビー

2. 参加費: 1,000円

3. 会期中の連絡先: 広仁会館内 小線源治療部会事務局 TEL: 082-257-5257

 

IV. 演者の方へ

1. 発表

あらかじめ,次演者席にお着きください。

一般演題は,各15分(12分の口演と3分の討論)でお願いします。

2. スライド

スライドの枚数制限はありませんが、1面のみです。

口演セッションの開始30分前までに試写をすませて,スライド受付にご提出ください。

口演終了後,すみやかにスライドの返却を受けてください。

3. コンピュータ

ご自身のコンピュータを持参してください。

バックアップデータを,CDなどで持参されることをお勧めします。

口演セッションの開始30分前までに,試写をすませてください。

 

V. 座長の方へ

セッションの開始10分前までに,次座長席にお着きください。

時間厳守で,司会進行をお願いします。

 

VI. 招待講演

629日(土) 12:5013:50    

  「北米での前立腺癌治療の動向」 カリフォルニア大泌尿器科 篠原克人

 

VII. 世話人会

629日(土) 8:158:45    広仁会館 中会議室

 

VIII. 総会

629日(土) 12:2012:40   広仁会館 大会議室

昼食を用意いたします。

 

IX. 懇親会

6月28日(金) 18:00〜20:30 (前日です)

ひろしま美術館 広島市中区基町3‐2  TEL: 082-223-2530

懇親会費: 5,000

 

X. 連絡先

広島大学医学部放射線科 広島市南区霞1丁目2-3

当番世話人: 広川 裕

TEL: 082-257-5257 FAX: 082-257-5259

電子メール: housya@hiroshima-u.ac.jp

 

 

 

 

第4回小線源治療部会講演抄録

 

招待講演  (座長:癌研附属;山下 孝)

北米での前立腺癌治療の動向

 

カリフォルニア大泌尿器科  篠原克人

 

 アメリカでは前立腺癌は皮膚癌を除けば男性では発生率がもっとも高い癌である。また肺癌に次ぎ男性の癌死の原因の第二位にあげられている。というわけで前立腺癌はアメリカ国民の関心をもっとも得ている癌の一つであろう。

一般的にアメリカでは予防医学の観念が発達しているため,一般内科医や家庭医により毎年定期的に検診を受けている人が多い。PSAがその中に含まれている事がおおいが,PSAによるスクリーニング自体いまだコンセンサスがえられていない。内科医の立場としては,これによって前立腺の癌死が減少していると言う証拠がない,またPSAの結果あるいは生検結果による精神的苦痛や治療による副作用によるQOLの低下などの悪影響がスクリーニングによって得られる利益を上回る,などの理由からPSAスクリーニングに反対している医者も多い。しかしながら近年カリフォルニア等の州では患者にPSAの存在とその利益や不利を患者に説明する事が義務付けられ,その結果PSA高値により泌尿器科医に紹介されてくる患者は非常に多い。

 このようにアメリカではPSAがスクリーニングに使われ出した1980後半から特に若年者の早期の前立腺癌が目立って増えてきている。前立腺癌は病期が長く進行も比較的ゆっくりとしている。しかしその進行度は予測がつきにくく,また一度進行してしまうと完治は難しくなるという特徴がある。さらにホルモン療法が非常に効果的なので保存的治療も早期の癌でありながら適応にされる事が多い。このようにその治療に関してはいまだにコンセンサスが得られず,アメリカでは前立腺全摘術,各種放射線療法,ホルモン療法,凍結療法,保存的経過観察等が医者によりまた患者により選択されている。近年はブラキテラピーや外部照射の比較的長期の成績が発表され,手術療法とあまり変わらない生存率が示されている事から,今後は治療後のQOLの差が治療法の選択に大きな影響をもたらす事になると思われる。

 

Katsuto Shinohara, M.D.

Education:

              1973-1975    Yokohama City University, Premedical course

              1975-1979    Yokohama City University, School of Medicine

Postgraduate Training:             

              1979-1982    Resident in General Surgery, Mitsui Memorial Hospital,                            

              1982-1984    Resident in Urology, Kitasato University Hospital

              1984-1988    Fellow in Urological Oncology, Baylor College of Medicine,

Professional Positions:             

              1988-1991    Clinical Instructor, Department of Urology University of

                California, San Francisco

              1991-1999    Assistant Adjunct Professor, Department of Urology

                                   University of California, San Francisco

              1999-           Associate Adjunct Professor, Department of Urology

                                   University of California, San Francisco

 

 

 セッションI. 頭頸部癌  (座長:静岡がんセ;鎌田 実)

1. 透析患者口腔癌の小線源組織内照射

 

東京医科歯科大放   張 彦彬,林 敬二,太田さや子,吉村亮一,渋谷 均

 

【目的】透析患者の放射線治療について評価している報告は数少ない。我々は今までに8例の口腔癌を発症した透析患者に低線量率組織内照射を行った。これらの患者の現在までの治療経過を副作用を中心に検討する。

【対象と方法】対象は平成6年から平成14年に口腔癌に対し,低線量率組織内照射を行った透析患者8例である。症例の年齢は47歳から90歳で,その内男6例と女2例で,舌癌7例(Ir2例,Cs2例,Ra1例,Au2例)と頬粘膜癌1例(Au)であった。線源刺入は通常患者と同様に局所麻酔下で行い,線量計算後刺入時間を決定した。この際,総線量は通常の場合と同様とした。全例刺入期間中はポータブルの透析器を用い,RI病室内にて透析を施行した。治療後,外来にて経過観察を行い,放射線治療の副作用を口腔粘膜病変,下顎骨壊死の程度や,その他のQOLに影響するような病変の程度などで評価した。観察期間は293月間であった。

【結果】8例中Auを用いた舌癌症例2例で局所再発を認めた他は,現在まで局所制御良好であった。8例中,外照射と組み合わせた1例のみが舌潰瘍が認められた以外に,他の7例はgradeIの口腔粘膜病変にとどまった。

【考察と結論】今回我々の施設で経験した8例の透析中での小線源治療の症例では,RI病室での透析をしながらの通常の低線量組織内照射治療で大きな副作用を起こさずに遂行できた。透析患者に対しても小線源組織内照射の治療は有効であり,通常の照射線量でも非透析患者と比べ,放射線治療による副作用が起こる確率に差が見られないと考えられる。

 

2. 舌癌組織内照射におけるスペーサー使用のピットホール

 

広島大歯放、放*  藤田 實,広川 裕*,木村智樹*,村上祐司*,権丈雅浩*,伊藤勝陽*

 

 

 スペーサーは舌癌組織内照射の際に下顎骨への線量を減少させ下顎骨壊死の発生を低減させるための放射線治療補助装置である。広島大学放射線科では1990年1月より使用し始め,これまでおよそ200例に対して使用してきた。当初は歯科用印象剤を利用して作製していたが,同年11月からは歯学部附属病院補綴科に依頼しレジン製のスペーサーを作製使用することを基本にしている。しかし,刺入までに時間のない場合には便宜的に歯科用印象剤を利用してきた。2000年までの11年間に下顎骨壊死の発生はなく,19801990年までにみられた11例に比較し明らかにスペーサー使用による効果がみられた。この間1993年後半からはRa線源は廃棄し,Irヘアピン線源のみを使用している。スペーサーの装着感に関する治療後の患者アンケートでは,50%強で装着に伴う違和感を訴えた。これ以外に,使用中に唾液がもれる,吐き気がする,外れやすい等の不満が20%強の患者にあったが,これらは作製時の配慮で改善された。装置の性格上,概ね受け入れられる結果ではないかと考えられた。

また,いくつかの有害事象が治療後に生じる可能性のあることが明らかとなった。一つは口蓋粘膜潰瘍あるいは歯肉退縮である。スペーサーによって患側舌がやや正中側上方に押しやられるためヘアピンヘッドが口蓋あるいは上顎歯槽粘膜に接し,治療後接触部位に潰瘍や歯肉退縮を生じる場合である。他には少数例ながら,下顎骨内側面に骨隆起がある患者にスペーサーによる圧迫が原因と思われる褥瘡の形成がみられる場合があった。いずれも重篤度は低いと判断されたため保存的に対応してきた。現在,スペーサーを用いることは舌癌組織内照射時の必須事項となっているが利用にあたっては義歯作製に関わる専門的なサポートも重要であると思われる。

 

3. 頭頚部組織内照射における鉛ブロックの有効性について

 

大阪成人病セ放治,国立大阪放*  大西剛史,能勢隆之,川辺清人,佐々木潤一,

熊谷洋司,山根康彦,福島英治,松井 等,小泉雅彦,佐々木靖廣,西山謹司,吉田 謙*

 

【目的】頭頸部癌組織内照射において,下顎骨壊死の防止は重要である。現在我が国では,被曝線量軽減対策としてシリコンスペーサーが多用されている。しかしIr-192の鉛半価層は2.5mmと薄く,鉛による遮蔽が有効である。我々は00年7月から遮蔽体として鉛合金を使用している。この有効性について,ガラス線量計を使用し検討した。対象は00年7月から02年4月まで,当センターで実施した組織内照射 92人中,鉛ブロックを使用した23名について検討した。

【方法】1.患者の歯型から印象(シリコンレプリカ,以下a)を採取する。2.下顎骨の線量測定部位を決定し,aの当該部分を切削しポケットを作成する。3.aを基にシリコン材で陽型を作製する。4.陽型に鉛合金を注入し,鉛ブロック(以下b)を作製する。bにもaと同部位にポケットが印象されている。5.aのポケットの両端には位置同定用の鉛玉を,bのポケットにはガラス線量計Dose Ace(千代田テクノル)をそれぞれ埋没する。6.シュミレーション時にaを患者に装着し,計画用フィルムを撮影する。7.治療計画装置CadplanBT(Varian)を使用し,aの鉛玉の位置から下顎骨の線量測定部位における吸収線量を計算する。8.毎照射時,患者に鉛ブロックを装着して,吸収線量を実測する。鉛玉が同定可能であった患者13名の計算線量と測定線量の結果を比較した。【結果】計算線量の平均値は21.70(6.1850.45)Gy, 測定線量の平均値は8.86(1.86-18.95)Gyであった。鉛ブロックにより,下顎骨の吸収線量が30.6(18.9-51.3)%(SD=8.9%)に減少した。

【結論】鉛ブロックの使用により,シリコンスペーサー使用時と比較して,下顎骨の吸収線量が1/3以下と大幅に減少した。なお,当該患者の下顎骨壊死は発生していない。

  

4. 組織内照射における線量投与線の精度の検討ガラス線量計による測定

 

大阪成人病セ放治,国立大阪放*  能勢隆之,小泉雅彦,大西剛史,佐々木潤一,

川辺清人,西山謹司,吉田 謙*

 

【目的】我々はParis法に準じた線量分布図を作成の上,ターゲットを囲む相対的等線量線に 抗腫瘍線量を投与している(CTV-based Dose Prescription)。治療計画装置(CadplanBT /Varian)中で,微調節して作った線量投与線が,どれほどの再現精度で照射されるのかを検証し,線量投与におけるマージンの必要性について検討した。

【対象と方法】00年7月から02年4月までに当科で組織内照射を施行した頭頸部癌45例(中咽頭27,口腔18)に対し,腫瘍表面,舌背,顎下皮膚,下顎骨内側にガラス線量計(Dose Ace/千代田テクノル)を留置した。線量計の両端には同定のため鉛玉を封入した。同定可能であった32人67部位で計算線量と測定線量とを比較した。

【結果】全体の測定線量 / 計算線量比は,平均98.7%(38.7-171.6%,SD22.9%)であった。線量投与に用いた相対的等線量線の範囲(70-97%Basal Dose Shell)での同比は,平均95.0%(86.2-104.8%,SD6.6%)であった。これより外側の等線量線での同比は,平均105.1%(38.7-171.6%,SD28.8%)であった。線量投与の範囲より内側の等線量線における同比は,平均91.1% (55.7-115.6%,SD15.1%)であった。

【考察】計算線量,測定線量ともさまざまな誤差要素(撮影精度,動き,アルゴリズム,急勾配な線量分布,線量計の方向と大きさ)を含んでいる。線量投与に用いる等線量線の範囲の内側,外側ともばらつきが認められたが,線量投与に用いる範囲の等線量線では再現精度が高かった。

【結論】線量投与に用いる範囲の等線量線では,極めて再現性の高い照射が可能である。線量投与にはマージンは原則的に不必要(5%未満)であると考える。

 

 

セッションII. 骨盤内腫瘍    (座長:広島大学;兼安祐子)

5. セシウム針による婦人科領域の組織内照射

 

新潟大放,歯放*  杉田 公,土田恵美子,笹本龍太,山ノ井忠良,益子典子*,勝良剛詞*

 

 組織内照射は適応は制限されるが局所制御はほぼ100%である。婦人科領域の治療では1週間の排便停止と過度の体位保持を命じていたが,治療中の苦痛と術後の体力回復の問題は大きい。そこで我々は婦人科領域において刺入時間の短縮と照射中の過度の制限からの解放のために線源固定法を替えた。7mm大の玩具ビーズをセシウム針の頭に針の同定用の絹糸で縛る。あるいは針頭の組織内への埋没を防いで線量分布を稼ぐためにビーズの穴に針頭を通しビーズの出口に針穴が位置するように縛り方を工夫した。刺入後針頭を組織に縫合せずビーズをガーゼとテープで固定した。排尿はフォーリーを入れ食事は普通食を座位で食べ最低限の行動と排便を許可した。根治2姑息1例である。症例@子宮頚癌IIb。術後照射全骨盤50.4Gy後,26ヶ月で1cmφ6mm厚の断端再発を認めH氏オボイド1側による粘膜下7mm6Gyの腔内照射5回で縮小したが,1月後再増大し137Cs針6本30mCi(70%に減衰)167時間の組織内照射をした。術者胸部の被曝94μSvであった。18ヶ月良好である。症例Aは子宮頚癌IIb。術後全骨盤照射50.4Gyの18月後傍大動脈LN再発に50Gyを照射した。更に9月後,尿道周囲にφ3cmの再発。137Cs針13本81mCi192時間の照射,刺入時間10分被曝130μSvで4ヶ月良好。症例Bは直腸癌で27月断端再発を再手術した。30月後再再発に全骨盤照射58Gyと動注を行った。18月後腟浸潤による性器出血があり腟シリンダによる偏側の腔内照射粘膜下5mm7Gy2回を行った。なお出血あり1月後137Cs針8本18mCi168時間の照射,被曝44μSvで10ヶ月良好。いずれも線源脱落などの不都合はなくPS低下も最低限であった。刺入時間は固定縫合が不要で10分以内に短縮され抜針は瞬時である。患者の苦痛は軽度で姑息照射としての適応も広がる。

 

6. 直腸癌術後局所再発・遺残に対する外部照射と小線源治療の併用治療の成績

 

和歌山医大放,2外*,麻酔**  岸 和史,梅本春生*,岡本一仁**,諏訪和宏,

白井信太郎石井清午佐藤守男

 

【目的】直腸癌術後の局所再発に対する外部照射と小線源治療の併用治療の成績を評価する。

【方法】99年度から直腸癌術後局所再発13人・遺残1人計14人が疼痛と局所腫瘍の制御の目的で外部照射と小線源治療からなる放射線治療を受けた。手術(Miles 11)から局所再発までの平均期間は1057+547日で,放射線科受診時には全員疼痛があり,9名は鎮痛剤を服用中(3名はモルヒネ)であり,座位や仰向け姿勢に障害があった。11名に血中CEAが高値で,6人に多臓器転移があった。全例造影MRIで病巣が確認された。放射線治療線量は平均60Gy(50-70Gy)で,10人に直交4門照射三人に対向2門照射1名に3CDRTが行われた。直交4門では再発頻度の高い領域(前立腺周囲,仙骨前部,坐骨周囲)にあつらえた4門照射野で一回2Gy/日で45-50Gyを照射した後,腫瘍局所に1025Gyを照射し,計60-70Gyとした。小線源治療は仙骨硬膜外麻酔後に行い,CTガイド下で経会陰式に病巣に刺入した。標的腫瘍体積と0.5-1cmの辺縁部に対してマイクロセレクトロンHDR192Irで,6Gyを3-4回(18-24Gy/2日)または18Gyか20Gy1回を照射した。

【結果】放射線治療開始から875日177日経過した現在7/14名が生存中である。疼痛は全例でいったん消失・軽減しこの当初の除痛効果が持続した期間は327日252日(37-720)であった。疼痛再発には再治療が有効であった。造影MRI画像では評価困難例をのぞきPRは8例(うち1例は2年半の臨床的CR)であった。皮膚再発例1例で皮膚漏が現れた。死因は5例では肝・肺の転移,2例は腎後性腎不全であった。

【考案】これまでの報告を見ると直腸癌術後局所のみ再発・遺残に対する外部照射のMSTは12,14,16,24ヶ月である。

【結語】直腸癌術後局所再発・遺残に対する外部照射・小線源治療併用療法は除痛・局所腫瘍制御に有用であり,予後の改善も期待でき,根治の可能性もある有益な姑息治療であることが示唆された。

 

7. 骨盤内腫瘍に対する術中組織内照射チューブ刺入術

 

群馬大放  桜井英幸,原島浩一,鈴木義行,石川 仁,清原浩樹,斉藤淳一, 北本佳住,

中山優子,山川通陸,長谷川正俊,中野隆史

 

 骨盤内腫瘍の手術後の再発防止や術中の腫瘍残存に対する術後照射を目的として,外科の依頼に基づいて術中に小線源照射用チューブ刺入を行ったので,初期治療経験について報告する。対象は局所再発のリスクが高いと外科医により判断された下部進行直腸癌9例,卵巣癌骨盤内再発1例の計10例で,年齢は平均60.2歳(36-78歳),男性6例,女性4例であった。直腸癌症例では8例で腹会陰的直腸切断術が,1例で低位前方切除術が施行された。低位前方切除術が施行された1例を除き,術前に外部照射が施行されていた。直腸癌症例のうち8例では治癒切除が施行されたが,残る1例は肉眼的に腫瘍の残存が明らかであった。卵巣癌の1例でも骨盤側壁に肉眼的に腫瘍が残存していた。組織内照射用チューブ刺入は開腹下で病変の切除と同時に行った。ガイド針刺入は直腸癌では経会陰的に,卵巣癌の例では腹腔内から刺入した。平均のチューブ数は7本(5-10本)であった。線量計算のためにX線写真とCTを手術翌日に撮影した。治療計画の翌日から,チューブ中心から5mmの点で1回5Gy,1日1-2回法で総線量20-50Gyの高線量率組織内照射を行った。治療中の問題点として,チューブの破損が1例で認められた。また,低位前方切除術が行われた1例では,術後刺入部を清潔に保つことができず会陰部の膿瘍を生じた。直腸癌では,肉眼的残存のあった1例で局所再発,低位前方切除の1例で吻合部再発が認められ,この2例が原病死した。その他の直腸癌症例および卵巣癌症例では,刺入部への再発は認められなかった。

 

8. 骨盤組織内照射におけるテンプレート改善の試み

 

国立大阪放,大阪成人病セ放治*  吉田 謙,能勢隆之*,大西剛史*,小泉雅彦*,御供政紀,西山謹司*

 

【目的】The Martinez Universal Perineal Interstitial Template (MUPIT) は骨盤腫瘍に対する組織内照射に使用されるテンプレートとして代表的なものである。しかし,1.1 cm間隔に正方形に配列された刺入孔だけでは,直腸(目標線量はPrescribed doseの80%以下)などOrgans at risk (OAR) の近傍にあるCTVを適切な等線量線で囲むことが困難な場合もある。今回我々はMUPITに刺入孔を追加した。直腸付近に存在する腫瘍を想定した実験モデルを用いて,(A) 通常のMUPITを用いた場合と,(B) 刺入孔を追加したMUPITを用いた場合の治療計画を行い,線量投与線の比較を行ったので報告する。

【対象と方法】組織内刺入用ファントム(タイセイメディカル)を改良し,膣,CTV,OAR(直腸)を想定したモデルを作成した。膣内にシリンダーを挿入したMUPITガイド下にアプリケータ刺入を行った。アプリケータは@CTVを囲む,AOAR内に露出しない,よう刺入した。通常のMUPITを用いた場合(A法)と直腸近傍に3ヶ所の刺入孔を追加したMUPITを用いた場合(B法)の2つの治療計画を行った。Geometrical optimization により作成した等線量線の中から,CTVを囲む%Basal doseの最も高い線を選んで6 Gyの線量を投与した。OAR(直腸)に投与された線量を比較した。

【結果】CTVを囲む線量投与線はA法で68%Basal dose surface,B法で85%Basal dose surfaceであった。また,OAR(目標線量4.8 Gy)に投与された最大線量はA法で5.1 Gy,B法で4.8 Gyであった。

【結論】MUPITに刺入孔を追加することにより,Prescribed dose を妥協することなくOARの線量を目標以下にすることができた。なお,ガラス線量計(Dose Ace/千代田テクノル)による実測の結果も追加する予定である。

 

 

セッションIII. 症例報告・その他        (座長:東京医療セ萬 篤憲

9. 外面照射を施行した陰茎Bowen病の一例

 

佐賀医大放,北九州医療セ放*  徳丸直郎,舛本博史*,工藤 祥

 

 症例は42歳男性。96年頃より陰茎先端部に痂皮様病変を認め,99年4月同部の疼痛と湿潤傾向が出現し生検にてBowen病と診断された。腎移植の病歴があることや大量の出血が予想されることから手術は適応外とされ,本人の希望もあり放射線療法を施行することとなった。病変は表面のみであったが,亀頭から環状溝に渡って陰茎の約半周に認められ,通常の外照射では均一な線量分布が得難いと思われたため,密封小線源による外面照射を施行することとした。線源は137Cs管(38mCi,5本)を用い,自作したアプリケーターに線源を装着し照射を行った。3時間/回,2回/週で計12時間照射し,線量は表面で56.6Gy, 粘膜下1mmにて51.8Gyとした。照射終了後に一過性の発赤,びらんが認められたが次第に軽減し,10ヶ月後には病変部は正常部分と同様となり,30ヶ月後まで再発は認めていない。

X線や電子線の外照射を行うべきであったか,高線量率の小線源で行う場合はどうすればよいか等のご意見やご教示をいただければ幸いです)

 

10. セシウム針による立体刺入組織内照射にて治癒した進行舌癌の1例

 

札幌医大放  晴山雅人,坂田耕一,大内 敦,永倉久泰,染谷正則,中田健生,佐藤大志

 

 80歳女性,97年11月に右舌縁部の発赤に気付くも放置していた。98年6月に発語不明瞭,固形物摂取困難となり近医耳鼻科受診し舌癌(高分化型扁平上皮癌)と診断される。頸部CTにてN2bであったが,高齢とQOLを考慮し当科紹介となった。当科初診時,舌右縁にサイズ5.0(L)×4.5(W)×2.5(H)cmで中心部に亀裂様潰瘍を伴う隆起性腫瘍を認めた。頸部リンパ節を触知せず,またCTにて舌深層の筋肉に進展を認めず,T3N0M0(stage III)と診断した。

テレコバルトにて外部照射24Gyを行ったところ,腫瘍は平坦化するも潰瘍はより深くなった。セシウム針20本を用いて立体刺入による組織内照射66Gyを行った。なお舌尖部が離断の恐れがあったため,潰瘍部位の縫合を行った。治療後4年した現在も亀裂した潰瘍部は粘膜で被覆化され,有害事象もなく健在である。再建手術が進歩した今日,立体刺入組織内照射をする機会はなくなったが,工夫を行い治癒した進行舌癌の1例を報告する。 

 

11. 口蓋部病変に対する198Au grain刺入時に舌への照射防止装具を使用した症例と使用しなかった症例

 

新潟大歯放,放*  益子典子,杉田 公*,土田恵美子*,笹本龍太*,林 孝文,勝良剛詞

 

 舌への照射防止装具を使用した症例は,48歳,女性,上顎洞腫瘍,SCC,T4N0M0,三者併用療法後の断端近接部に対して,根治照射として198Au grainを16個刺入した症例。線源脱落防止と舌への照射防止を兼ねる装具を,歯科用材料で作製し,装着した。舌への照射防止装具を使用しなかった症例は,73歳,男性,軟口蓋腫瘍,SCC,T2N0M0,急速増大を抑制するための外照射後に,根治照射として198Au grainを18個刺入した症例。上顎総義歯を利用した線源脱落防止装具を歯科用材料で作製し,装着した。この症例でも,舌への照射防止のための装具の作製と,装着も恐らく可能であったのだが,作製し忘れ,舌の難治性潰瘍が術後1年間は治癒せず,QOLを低下させてしまった。これらの症例で用いた歯科用材料はいずれも安価で,装具の作製は容易で,線源の脱落は無く,装具による局所刺激症状も無く,7日間の連続装着が可能であった。安静位では舌が口蓋部に接することを考慮し,口蓋部病変への小線源刺入時には,舌への照射防止のための対策を忘れることのないようにしなければならない。

 

12. Patterns of Care Study (PCS)によるわが国の小線源治療の実態

 

大阪成人病セ放治,九州大放*,大阪大保**,放医研***,国立がんセ放#,大阪大集放治##

小泉雅彦,中村和正*,手島昭樹**,佐藤眞一郎**,今井 敦#,能勢隆之,井上俊彦##

 

【目的】小線源治療の精度管理のため,臨床実態の評価が必要とされる。JASTRO構造調査より小線源治療施設の構造実態を,医療実態調査法(PCS)より乳癌,食道癌,子宮頚癌,肺癌,前立腺癌での小線源治療の実態を,明らかにし解析した。
【方法】構造調査は厚生省阿部班,池田班での調査PCS'92-94と井上班での調査PCS'95-97に参加した全国113施設の1995年度JASTRO構造調査結果から解析した。全国の施設を4層(A:大学病院・がんセで年間症例数1:300例以上,2:300例未満,B:他の国公立病院で年間症例数1:120例以上,2:120例未満)に分類した。小線源治療施行の有無,RALS線源・LDR線源の種類につき施設層間の比較をした。診療過程調査はPCSにより各施設層より無作為抽出した施設で治療された症例で一定のeligibilityを満たすものから小線源治療についての記述を解析した。
【結果】構造調査から,施設層毎に小線源治療の実施率,装置の設置率が違い,A1=A2>B1>B2の順となった。線量率はHDRがLDRより多かった。RALS線源はA1ではIr,Co,Csと続き,他ではCo,Irの順であった。5疾患の診療過程調査から,組織内照射は一部施設での前立腺癌への適応にとどまり,他は子宮頚癌・食道癌での腔内照射が主体であった。但し,その実施率には施設層間で差があり,A1>A2>B1>B2の順となった。線量評価点は子宮頚癌のA点,食道癌の粘膜下5mmが標準的で施設層間に差はなかった。1回線量・全線量については施設(層)間でばらつきがあった。アプリケーターは多彩であった。
【結論】小線源治療の実態は,適応率などで施設層間の差が大きかった。小線源治療が標準通り実施されるかどうかは,装置と放射線治療専門医・専門技師の有無に依存するため,これらの確保がまず必要であろう。
 

 

13. Ir-RALSの治療現場からの声:技術学会治療分科会アンケート2000年から学ぶ

 

神奈川がんセ放技2  相川良弘

 

技術学会治療分科会(2000年10月20日千葉市)でのシンポジウム「リモートアフターローダーの現状と問題点」のために,2000年7月にイリジウムRALSのユーザ治療施設にアンケートを行った。「安全に関するユーザー調査報告」として発表し,分科会誌Vol.15-1に掲載した。数字集計のほか,装置に対する満足度,装置の故障・エラー・トラブルの経験を取りまとめた。お寄せいただいた情報や意見はこの報告以外にも多くあり,近日の状況変化とともに見直しをした。イリジウム装置の実態や不具合,安全使用上の問題点に関すること,事故や過誤やニアミスの経験,生の声や意見を紹介し,分析,考察する。現場での改善策,QA方法は,今後とも役に立ち重要なので発表する。

 

 

セッションIV. 前立腺癌   (座長:大阪成人病セ;能勢隆之

14. 前立腺組織内照射の基本技術

 

東京医療セ放,埼玉医大放*   萬 篤憲,戸矢和仁,土器屋卓志*

 

 現在当院ではIr-192細ワイアを用いた前立腺癌の小線源治療を行っている。これは,近い将来わが国に導入予定されている永久刺入線源I-125の代用であり,準備や刺入の技術はほぼ同様の方法をとっている。これまでに100名の患者を治療し,I-125導入を容易とする基本的技術を獲得してきた。今回は,基本的な刺入技術について解説し,I-125の刺入技術と比較しながら考察したい。

治療体制は,泌尿器科と放射線科の合同作業が重要である。医師2名,看護婦1名,技師1名は最低必要人数であり,さらに2名の協力が望ましい。線源管理や線源準備は放射線科側が責任をもたなければならない。麻酔は泌尿器科医による腰椎仙骨麻酔を用いている。基本的には硬膜外麻酔は不要である。患者体位は,拡大砕石位であり,良い足の固定台が必要である。これは恥骨弓による刺入妨害を最小限にするためである。適応とする前立腺の容積は50ml未満に限る。経直腸エコーについては,ゼリーによる尿道描出の工夫や直腸へのプローブ圧を軽くすることが大切である。刺入中に前立腺が動いたり,血腫ができることは珍しくない。尿道の左右交互に刺入する。術者と放射線科医のコミュニケーションが欠かせない。尿道の近傍5mm以内には度の断面でも穿刺しないように注意し,理想的な線量分布と考えられている modified uniform loading を心がける。一時留置用の線源を用いる場合には,治療中の前立腺内での固定が重要であり,金属チップによるマーキングをapex, baseに留置し,X線による確認を行う。現在は刺入中の透視は用いていないが,I-125では透視は必須である。術中にUSを用いた三次元的線量分布図作成は良い線量分布を完成させるために必須である。特に直腸前壁,尿道の線量は線源留置前に十分把握しなければならない。一時線源であるため,当院では2-3日間の留置が必要であり,テープによる固定を丁寧に5重に行っている。最終的に線量分布・DVH解析で満足できないような症例も稀にはあり,その場合には外照射を併用する。I-125線源による永久刺入では,一旦線源を針から離脱させるとやり直しが利かないため,深さや線源逸脱により大きな注意が必要である。I-125を用いた場合の線量評価の時期や方法については海外の多施設で検討されている。そこから得られた現代的手法を用いたIr-192低線量率組織内照射の経験は世界的にも少なく,実用性の点を考慮すれば,I-125の導入後に普及するものとは位置付けられない。しかし,線量率の点からは,治療効果について大変興味深いものがあり,高線量率Ir-192単独治療やI-125による治療成績との比較を将来検討する価値が高いと考えている。

 

15. 限局性前立腺癌に対するCTガイド下刺入による高線量率イリジュウム組織内照射

 

栃木がんセ放治  築山 巌,片野 進

 

【目的】栃木県立がんセンターにおいて1998年2月から2002年5月までに28例の前立腺癌に対して高線量率イリジュウム組織内照射を施行した。これらの症例の検討から本治療法の安全性,問題点について検討したので報告する。

【対象】適応は以下の通りとした。

1)限局性前立腺癌,Gleason Score4以上で患者が手術を希望しない,或いは患者が高齢,全身状態不良等により手術の危険性が高い場合。2)StageVではホルモン療法との併用を原則とした。3)限局性前立腺癌との診断で手術を施行したが骨盤リンパ節節清により転移を認めた場合(睾丸摘除術のみで手術を終える)。

28例の年齢の中央値は68才(52−79才),観察期間の中央値は11ヶ月(41-1ヶ月),PSAの中央値9.2(0.14−148),グリソン・スコアの中央値は5(3-9),組織分化度は高分化/中高分化/中分化/低分化=12/4/9/3,T分類はT1/T2/T3=12/11/5であった。

【方法】放射線治療は全骨盤照射40Gy,2002年3月からは前立腺に限局した4門照射終了後,高線量率イリジュウムによる組織内照射をCTガイド下透視によって行った。テンプレートは Porta Perineal Applicatorを用いて15本のステンレス製の針を刺入した.1回5Gy,1日2回で計20Gyを2日間で照射した.

【結果及び考察】全例にPSA値の低下が得られた。急性期有害事象として排便時痛2例,排便時痛1例が見られたが無処置で軽快した。晩期の有害事象は下血,血尿が各1例が一過性に見られた。

本法は比較的安全に施行し得ると考えれるが外照射との組み合わせ等について再検討が必要である.

 

 

16. 前立腺癌高線量率組織内照射における“最適化(optimization)”プログラムについての検討

 

静岡がんセ放治,大阪大学集放治*  吉岡靖生,隅田伊織*,田中英一*,井上武宏*,井上俊彦*

 

 高線量率組織内照射における可動式小線源の停留位置と停留時間の調整には“最適化(optimization)”と呼ばれるコンピュータプログラムを用いることが多いが,最終的にはある等線量曲線を選択して処方線量を投与する。“最適化”は有効な手段であるが,治療の質を決定するのは作成された線量分布である。“最適化”プログラム自体が最良の線量分布を保証するものではなく,線量投与点などとの組み合わせで作成された個々の線量分布ついて検証が必要である。

前立腺癌に対する高線量率組織内照射において,“最適化”プログラムであるGeometrical optimization法(GO)とDose point optimization法(DO)とを用い,各々の線量投与点を変化させた場合の線量分布を比較し,DVHから算出したcoverage index (CI)およびdose non-uniformity ratio (DNR)を指標として評価した。GOでは処方線量を投与する等線量曲線を,各々アプリケータから3,5,10mmの点を通る曲線として比較した。3mmの場合CIは90%に満たなかった。5および10mmでCIは良好であったが(97%,100%), 10mmでは DNRが0.84と高く,ターゲット内にhigh dose volumeが多くなった。一方DOではCTV表面に線量投与点を置いたときCIが72%となり,本来CTV表面に処方線量を投与するはずのDOがその機能を必ずしも発揮しなかった。CTVから5および10mm外側にdose pointを置いたときCIは良好となったが(91%,100%),DNRが0.64,0.85と高く,high dose volumeが増大した。いずれの“最適化”プログラムを使用する場合でも,線量投与法により線量分布の適否が大きく左右されることに留意すべきである。

 

17. 限局性前立腺癌に対する外照射併用組織内照射治療成績:2年以上経過した51症例の検討

 

川崎医大放治  平塚純一,河辺哲也,今城吉成

 

 当科の治療内容は,外照射45Gyに組織内照射を併用するものである。組織内照射は,サドル・ブロック麻酔下で TRUS(経直腸超音波装置)画像の横断像と矢状断像でモニターすることによりアプリケーター針をテンプレートを通して前立腺と精嚢の全長および針の先端が膀胱筋層に及ぶように平行刺入する。その後CTを撮影し,刺入時のTRUS画像を加味して治療計画を立てた。線量評価は,前立腺被膜面で行っており,1回5.56.0Gy照射を30時間に34回施行する。尿道,直腸線量は,評価点の線量に対して,それぞれ110155% , 4360% の範囲であった。当科で治療し2年以上経過した初発治療症例51例の成績について述べる。症例の平均年齢は,70.1歳(58歳79歳)である。 UICC規約(1997年)での病期分類はT1c: 7例,T2:30例,T3:14例,Gleason sumは,2-4:11例,5-6:23例,7-10:17例,そしてinitial-PSA値は,10 ng/ml未満:13例,10-20 ng/ml:20例,20 ng/ml以上:18例であった。2454カ月の観察期間(中央値:38カ月)で,PSA値が,1.0ng/ml以下になっている症例は,40例(78%),1.0ng/ml2.0ng/mlは3例(6%)である。PSA値が,2.1ng/ml以上の症例は8例で,その内1例は骨転移症例で,6例は治療後PSA値は確実に減少してきておりPSA再発はない。1例(initial-PSA値:150ng/ml)がPSA再発を示した。早期の有害事象として,軽度の膀胱炎,直腸炎はほぼ必発であるが,その程度は強く出たとしてもGrade 2であった。晩期の有害事象は,4例にGrade 2の直腸出血を認めた。

 

セッションV. 各種報告  (座長:栃木がんセ;築山 巌

18. ヨーロッパ小線源治療の見学報告:リヨン,ウイーンに6ヶ月間滞在して

 

静岡がんセ放治    吉岡靖生

 

  筆者は大阪大学大学院在学中,同院井上教授のご高配により,2001年4月から9月までの6ヶ月間ヨーロッパに留学した。4ヶ月はフランスのリヨンにて,2ヶ月はオーストリアのウイーンにて小線源治療を中心に学んだので報告する。

リヨンのCentre Hospitalier Lyon Sudには,ESTRO前会長であり直腸肛門癌の組織内照射で有名なJ.P. Gerard教授(現ニース勤務)や頭頸部組織内照射で有名なJ.M. Ardiet先生らがおられた。小線源治療専用の手術室と照射室7部屋があった(リニアックは3台)。医師は常勤医5名(麻酔医,非常勤,留学生を含めると17名),物理士5名,技師15名。小線源治療は月・火曜にまとめて行われ,1日3-5件の症例があった。低線量率Ir-wireを用いた舌癌,中咽頭癌(loop technique),口唇癌,肛門癌,PDR舌癌などを供覧する。

ウイーン大学附属病院(AKH)は,R. Pötter教授のもと機器も充実し,放射線治療専用のopen MRI,3次元超音波装置,小線源治療専用の手術室2室(麻酔医常駐),microSelectron HDR/PDR計4台,リニアック4台があった。放射線治療医26人を擁し,線量計算は物理士が,放射線治療病棟の管理は専属の内科医が行っていた。血管内照射,MRI planningによる前立腺・子宮組織内照射,およびMRIにてcustomizeされた子宮腔内照射,乳房温存術後組織内ブーストなどを供覧する。

リヨンのCentre Leon Berard,オランダ・ハーグのMedisch Centrum Haaglanden,オランダ・ユトレヒト大学病院のI-125前立腺組織内照射を比較する。

オランダ・ハーグのMedisch Centrum Haaglandenの膀胱組織内照射,ハンガリー・ブダペストのNational Oncology Instituteの乳房温存術後組織内ブーストを供覧する。

 

19. American Brachytherapy Society 23rd Annual Meeting参加報告

 

大阪大集放治  田中英一

 

 2002年5月22−24日にFlorida州OrlandoのHilton in the Walt Disney World Resortで開催された。

学会の内容は,20-30分程度の特別講演が14題(Prostate:3, Breast:4, Coronary:5, Gyn (HDR):1, Systemic Brachytherapy:1)と,口演が59題,ポスターが10題(合計Prostate:41, Breast:4, Gyn:6, Coronary:3, H&N:4, Others:11)であった。

 会長のColin G. Orton先生は,会長講演でABSの運営についての話を中心にされ,Web site(http://www.americanbrachytherapy.org)の充実などについて話された。また,現在の小線源治療の関心ごととして以下の5つをあげられた。@ProstateABreastBIntravascular Brachytherapy(IVBT)CHDRDSystemic Brachytherapy (Radioimmunotherapy)。

 Prostate brachytherapyの発表が多いのは例年どおりであった。John C. Blasko先生は講演で,小線源治療,外照射,手術ともPSA制御率はほぼ同等であるので,これからはQOLの評価が大切であることを強調されていた。また,Subir Nag先生は,Future ABS prostate projectsとして@Contouring prostate volume on CTAData base: permanent implant & HDRBMulti institutional clinical trial: HDR monothrapyの3点を述べられた。一般演題は,QOLや有害事象に関する発表や,Dosimetryに関する発表が中心でHDRは4題のみであった。

 Breast brachytherapyが注目されていた。温存手術後の組織内照射(HDR)単独治療の良好な成績が報告されていた。メリットとして5-6週間にわたる外照射に比べはるかに短期間で終了することが強調されていた。

来年は2003年5月7-10日にNew Yorkで開催される。

 

 

20. 厚生労働省がん研究助成金山下班の班会議報告

 

癌研附属放治  山下 孝

 

研究課題『高精度小線源治療の開発及び評価に関する研究』 

 

班員:土器屋卓志,築山 巌,日下部きよ子,西村哲夫,田中英一,

班長協力者:斎藤真理,野本由人,幡野和男,早川和重,廣川 裕,平塚純一,片岡正明,萬 篤憲,横山邦彦,能勢隆之,伊藤 彬

 

 高線量率Ir192 ( High Dose Rate Iridium, HDRIr-192 ) 装置を用いた,頭頸部,食道,気管・気管支,前立腺,骨盤内臓器等の悪性腫瘍に対する高精度小線源治療法は子宮頸癌を除いていまだレベルの高いエビデンスが得られているとは言えない。そこで,その有用性の評価を行う為に,各施設がそれぞれに行っている治療法の治療成績をまとめると共に各部位についてまず,少なくとも一つの共通のプロトコール作成を検討している。頭頸部,気管・気管支,食道,子宮,前立腺の5部位についてはプロトコールの骨子をまとめた。又,非密封アイソトープを用いた甲状腺癌の治療法についてもこの治療法自体の歴史は古いが,治療法の標準化は進んでいないので,この放射性ヨウ素療法の実態調査を行った。

 今回は各部位についてHDRIr-192のプロトコールを紹介する。

 

21. イリジウム線源不明事故の経緯とそれから学ぶ事

 

国立札幌放  西尾 正道

 

 平成14年5月28日に,当院で放射線治療用イリジウム(Ir-192)シンワイヤー線源1本 (直径0.3mm x 長さ2cm, 148MBq)が不明となる事故が発生した。放射能源弱により,平成14年5月22日に線源を廃棄したが,5月28日に日本アイソトープ協会にて線源の本数確認作業において,シンワイヤー1本が不足している旨,連絡を受ける。事故発生後の措置としては,(1)病院管理者への届出,および北海道厚生局への届出。(2)文部科学省への報告,(3)所轄保健所,警察および消防署へ届出。(4)本線源を使用して治療した患者さんのX線写真撮影およびサーベイメーターにより,体内に線源が残留していないことを確認。(5)小線源管理区域(病室,処置室,線源保管室,管理区域内廊下などの経路)をサーベイメーターにて線源を捜索。(6)国立札幌病院全館,ゴミ集積場および病院全敷地をサーベイメーターにて捜索,が行われたが現在まで不明となった線源は発見されていない。本事故の経緯と,それから学んだ事および今後の対応について報告する。