第3回小線源部会(2001年) 


日 時:2001年 6月23日(土)9:00〜16:00

場 所:国立札幌病院・北海道地方がんセンター 大講堂

世話人:西尾正道

8:559:00   開会挨拶

小線源治療・新世紀の到来(挨拶に代えて)

 

9:0011:00 [1] ビデオシンポジウム『子宮頸癌の小線源治療』

                                  司会:三橋紀夫(東京女子医大)

(1) 子宮頚癌に対する高線量率腔内照射の全国調査

広島大学放射線科 兼安祐子

(2) MRIを用いた子宮頸癌腔内照射におけるOptimization

千葉県がんセンター放射線治療部 幡野和男

(3) Changes in applicator position in low dose rate intracavitary brachytherapy

Department of Therapeutic Radiology  Seoul National University College of Medicine   Hong-Gyun Wu

(4) 再発形式からみた子宮頸部扁平上皮癌に対する放射線治療の問題点

群馬大学放射線科  桜井英幸

(5) 婦人科系腫瘍に対するCTガイド下組織内照射について

栃木県立がんセンター放射線治療部 築山 巌

(6) 子宮頸がん初回治療の一環としての高線量率組織内照射

国立国際医療センター放射線治療部 伊丹純

(7) 子宮頚癌に対する組織内照射

大阪大学放射線科 田中英一

(8)高線量率腔内照射を併用した子宮頚癌術後放射線治療

大阪市立大学放射線科 近藤聖子

 

11:0012:00 [2] その他の小線源治療    司会:白土博樹(北海道大学)

(9) 局所進行舌癌に対する高線量率組織内照射の経験

国立国際医療センター放射線治療部  伊丹純

(10) 骨軟部腫瘍における周術期小線源治療の検討

国立がんセンター中央病院放射線治療部  美奈子

(11) 直腸癌骨盤内再発に対する高線量率組織内照射

大阪市立大学放射線科 福田晴行

(12) ガラス線量計 Dose Aceを用いた組織内照射線量の測定

大阪府立成人病センター放射線治療科  能勢隆之

(13) CTV-based Dose Prescriptionにおける金属マーカーの有効性                                   国立大阪病院放射線科  吉田 謙

 

12:0012:20 [3] 厚生省がん研究助成金土器屋班最終報告

                                                 司会:晴山雅人(札幌医科大学)

(14) 『肺癌と食道癌のガイドライン報告』

埼玉医科大学放射線科 土器屋卓志

 

12:2012:50    昼食

 

12:5013:20    総会および連絡事項

 

13:2014:00 [4] 自慢症例、失敗症例、治療に難渋した症例の報告 

                                                     司会:神宮賢一(福岡大学)

(15) 動注併用外照射後の高線量率組織内照射により制御された進行舌癌の1例

浜松医科大学放射線科 西村哲夫

(16) 放射線化学療法後に残存した原発腫瘍に対して腔内照射、組織内照射で追加治療を行い著効が得られた上咽頭癌の一例

横浜市立大学市民総合医療センター放射線科 渡井喜一

(17) 組織内照射で治癒した外陰癌の一例

国立札幌病院放射線科 西山典明

(18) 直腸癌局所再発に対してイリジウム組織内照射を施行した1例

札幌医科大学放射線科 晴山雅人

 

14:0014:20 [5] 知っておくべき小線源の知識

                            司会:山下 孝(癌研究会付属病院)

(19) 日本アイソトープ協会 アイソトープ部 須藤幸雄 

 

14:2014:40 [6] ABS参加報告  司会:池田 恢(国立がんセンター東病院)

(20) 浜松医科大学放射線科 西村哲夫 

 

14:4015:00 [7] 小線源治療に関する全国調査報告

                                            司会:渋谷 均(東京医科歯科大学)

(21) 広島大学放射線科  広川 裕

 

15:0016:00 [8] RALS周辺機器と線量計算システムの概要 

                                              司会:幡野和男 (千葉県がんセンター)

9.         

                閉会挨拶

 

 

第3回小線源部会抄録集 

小線源治療・新世紀の到来(挨拶に代えて)

 この度は北海道がんセンター国立札幌病院放射線科の西尾正道先生に土地柄溢れた設定をしていただきました。お蔭で第3回研究会を滞りなく開催できることをうれしく思います。この部会を設立した強い動機は、何と言ってもわれわれ小線源治療の当事者が近年の線源核種の増加、適応の拡大、技術の高精度化という進歩に対応せねばならないことであったと思います。発足当時の井上俊彦前部会長のご提案は以下のようでした。

1)     教育セミナーの開催と研修拠点施設の整備

2)     疾患別コンセンサス・ガイドラインの整備

3)     小線源治療のQA

4)     新技術開発(US, CT, MRIガイド下組織内刺入、リアルタイム最適化治療計画)

井上前部会長がJASTRO会長にご就任されましたので、それに伴い小生が部会長を仰せつかりました。時あたかも新世紀が始まりました。そこでその後のわが国での動きを振り返ってみたいと思います。

 この1年間の小線源治療に関する動きとしては、日本アイソトープ協会医学・薬学部会放射線治療専門委員会と合同で「高線量率ラルス医療安全取扱講習会」を、また3回に亘って「血管内放射線治療治験における安全取扱のための教育研修会」を開催いたしました。日本アイソトープ協会医学・薬学部会放射線治療専門委員会のワーキンググループ(渋谷均主査)が小線源の安全管理を目的として全国調査を行い、データベースを作成しました。このまとめは広川裕先生が「全国調査の報告」として本研究会で発表されますが、関係者の絶大なご努力で予想以上の成果が挙がったように思われます。また前立腺癌低線量率照射の技術修得のため本年2月に米国シアトルでの研修会に有志の方々が出席されました。このような動きも定例化すればするほど成果が挙がると思われます。また一方で放射線治療に関する品質保証quality assurance への世間の関心が高まり、そのためのシステムの必要性、物理の方々の関与の重要性がより認識されたともいえます。総じて会員各個人のご努力に負うところが大きいので、部会としてはこれで満足とは言い切れませんが、井上前部会長のご提案は徐々に前進はしているとみてよいと思います。

 個人的には本年5月20−22日にカナダ・バンクーバーで開催された第22回American Brachytherapy Society 年次大会およびその1週前に米国サンフランシスコで開催された第37回American Society of Clinical Oncology 年次大会に出席しました。ABS年次大会では西村哲夫先生が出席し、土器屋班食道腔内照射ガイドラインと頭頸部小線源治療についてポスター発表されました。詳しくは西村先生の本研究会でのご発表に期待しますが、小線源の領域でも技術革新は常になされており、学会場で聞く限り前立腺癌組織内照射ではreal time planning が当たり前で、intraoperativeとは術中照射のことではなく、i. o. planningを指し、術中に素早く刺入計画を立案・修正し、その通りに実行するという時代になっているようです。血管内放射線治療に関しては本年は大きくは取り上げられませんでしたが、それでも「β線などによる近距離放射線治療という全く新しい物理学の確立を、cardiologist という放射線を全く知ろうとしない人と一緒にやる」ことを念頭におくべきとの重要な示唆を得ました。ASCOでも本年は喉頭を主眼としたorgan preservation が議論されるようになっています。いずれも相応の明確なevidence をもとに議論されております。ABS のメンバーとも旧交を温めましたが、世代交代とともに新しいメンバーが新しい理念で取り組んでいる様子が窺えました。

 本年は西尾当番世話人のご配慮により日本アイソトープ協会須藤幸雄氏からの「知っておくべき小線源の知識」という演題が企画されています。線源を供給される側からみた興味深いお話しが聞けるものと期待していますが、これに限らず、協会に蓄積されたデータやノウハウをわれわれがより一層有意義に活用させていただくことも目的の1つに挙げても良いかもしれません。

 本研究会は今回で3回目を迎え、ようやく方向が定まってきたようにも思われます。参加された方々には本研究会への出席を有意義なものとしていただくと共に、更にわが国の小線源治療の発展進歩に繋がるために本研究会に軌道修正が必要であるとするならば、会員の方々のご努力で修正を加えることに何ら躊躇するものではないと思います。本研究会が会員の方々の研鑚のための大きなステップとなるよう願ってやみません。

平成13年6月23日

            日本放射線腫瘍学会小線源治療部会長

            国立がんセンター東病院放射線部 池田 恢

ビデオシンポジウム『子宮頸癌の小線源治療』
(1) 子宮頚癌に対する高線量率腔内照射の全国調査

広島大学医学部放射線科 兼安祐子, 広川 裕

 

目的: 高線量率の普及に伴い,子宮頸癌に対する腔内照射の主役はCo-RALS からIr-RALSに移りつつある.わが国における子宮頸癌高線量率腔内照射の治療方針や治療技術の実態を明らかにする.

方法:  調査項目は,平成12年に子宮頸癌に対するRALS腔内照射の実症例数,腔内照射と併用または単独で行われた組織内照射の実症例数,腔内照射に使用したRALS装置・アプリケータのタイプ,線源強度(停留時間)の配分,病巣線量の基準,座標軸の定義,病期別の標準的なA点線量,直腸・膀胱の線量評価法,アプリケータ挿入後の腟内パッキング法,アプリケータの固定法,治療計画の実施頻度,腔内照射の開始時期,腔内照射日の外部照射実施の有無,外部照射の照射法,中央遮蔽の幅・高さ・傾き,病期別の全骨盤照射および中央遮蔽による照射の一回線量と合計線量,進行期での子宮傍組織への追加照射の有無,総治療期間などである.日本アイソトープ協会放射線治療委員会の小線源治療データベースに基ずき,全国のRALS保有217施設に,アンケート用紙を送付した.

結果: 平成13年6月21日までに176施設から回答を得た(回答率81%).平成12年に子宮頸癌に対してタンデム/オボイドによるRALS施行施設は149施設で1791例であった.うちIr線源が70施設,Co-60線源は93施設であった(重複も含む) .術後断端照射等を含めた全RALS症例は2067例でうち組織内照射は26例であった.病巣線量決定基準はA点線量が89%を占めたが,CT/MRIを用いて病巣線量・標的体積を評価している施設が4%あった.直腸・膀胱の線量評価は,実測/計算なしの施設が35%であった.従来の”標準治療法”には記載の無いアプリケータ挿入後の腟内パッキング法は, X線ガーゼ等でパッキングし,その状態を評価する施設は30%のみで,パッキングするが評価しない施設が50%,パッキングしない施設は17%であった.

結論: わが国における子宮頸癌に対する高線量率腔内照射法は,およその施設で”標準治療法”に原則的に準拠していたが,各施設で治療方針にばらつきを認めた部分もあった.”標準治療法”の項目の中では,更に検討されるべき線量評価法や個別化した治療法など,具体的なガイドラインの作成が必要である.

(2) MRIを用いた子宮頸癌腔内照射におけるOptimization

 千葉県がんセンター放射線治療部  幡野和男, 酒井光弘, 荒木 仁, 成田雄一郎, 秋山芳久

 

目的:MRIおよび3次元治療計画装置により、子宮頸癌腔内照射における線量評価点の再評価が必要となってきている。我々はこれまで、MRIにより描出される高輝度領域をCTVとした腔内照射治療計画を行ってきた。この治療法について検討を行う。

対象と方法:1995年5月から1997年12月までの子宮頸癌32例を対象とした。FIGO臨床病期はIB:5例、IIA:2例、IIB:11例、IIIB16例である。平均年齢63.8歳。観察期間中央値は49ヶ月。治療は全骨盤照射で30Gy、その後中央遮蔽で20Gy照射。初回腔内照射時にタンデム±オボイドを挿入した状態でMRIを行い、この画像における高輝度領域をCTVとして、PLATOで治療計画をおこなった。一回線量は6Gyまたは7Gyとした。この際A点線量も併記。局所制御率、生存率、晩期有害事象について検討した。

結果:CTVは平均で18.2㎤であり、PTVは66.8㎤となった。A点線量は平均5.57Gy(3.4-7.2Gy)であった。累積4年生存率はIB,IIA,IIB,IIIB期において、それぞれ80%、50%、85%、62%であった。観察期間内での晩期有害事象はGrade2以上は認められていない。

結語:A点線量での線量評価の見直しが必要であろう。

 

(3)  Changes in applicator position in low dose rate intracavitary brachytherapy

 Department of Therapeutic Radiology, Seoul National University College of Medicine

   †Institute of Radiation Medicine, Medical Research Center, Seoul National University

Hong-Gyun Wu,M.D.*,†,  Semie Hong,M.D.*

 

Purpose: For the low dose rate intracavitary radiotherapy (LDR-ICR), the treatment time usually takes more than two days with applicator in situ. We studied degree of displacement of the applicator and estimated geometrical accuracy of LDR-ICR for uterine cervix cancer.

Materials & Methods: Since February 1999, ten patients who underwent LDR-ICR for uterine cervix cancer were prospectively taken orthogonal radiographs (AP and lateral) before and after application. For these patients, displacement of the 3-dimensional coordinates for tandem and both ovoid were evaluated. We defined the reference point as a cross point of the horizontal line passing the anterosuperior edge of symphysis pubis and the vertical line passing the right pelvic wall. 

Results: The extents of displacement of the applicators are shown in Table.

 

 

Anteroposterior

Lateral

Superioinferior

Distance

Range

Mean

Range

Mean

Range

Mean

Range

Mean

Tandem

-1.6 ∼ 0.7

0.8

-0.2 ∼ 0.4

0.1

-0.8 ∼ 0.9

0.5

0.4 ∼ 1.7

0.8

Ovoid(rt)

-1.6 ∼ 0.2

0.7

-0.6 ∼ 1.3

0.3

-1.4 ∼ 1.1

0.7

0.2 ∼ 2.8

1.2

Ovoid(lt)

-1.6 ∼ 0.4

0.4

-0.6 ∼ 1.9

0.5

-1.3 ∼ 0.8

0.6

0.3 ∼ 2.2

1.1

 

The mean treatment time was 48.44 hours (range: 25.25 - 55.29 hours), and there were no significant correlation between treatment time and the extent of displacement.        

Conclusion: The extent of displacement was located within 1.1cm in linear distance and there was no correlation between term of treatment and extent of displacement.

 Key words: Low dose rate brachytherapy, displacement

 

 

(4)  再発形式からみた子宮頸部扁平上皮癌に対する放射線治療の問題点

群馬大学医学部放射線医学教室  桜井英幸,高橋満弘,村松博之,秋元哲夫,石川 仁,那須佐知子,中山優子,長谷川正俊,山川通隆,三橋紀夫

 

 1994年までに放射線治療を施行した子宮頸部扁平上皮癌379症例を対象として治療成績について解析した.治療方法は,外照射と3回の低線量率腔内照射を組み合わせて行うもので,治療期間は6週以上にならないよう配慮した.腹部傍大動脈リンパ節への予防照射および併用化学療法は原則として施行しなかった.病期別の5年累積生存率は,I期80%,II期73%,III期52%,IVa期34%,IVb期14%で,10年累積生存率は,I期71%,II期52%,III期39%,IVa期28%,IVb期9%であった.5年原病生存率は,I期98%,II期84%,III期71%,IVa期53%,IVb期14%で,10年原病生存率は,I期98%,II期77%,III期63%,IVa期44%,IVb期14%であった.再発の90%は5年以内に認められたが,傍大動脈リンパ節,鎖骨上リンパ節への再発は比較的長期にわたって認められた.骨盤内再発の要因として,腔内照射の線源配置が定型的に行えなかった場合や,腔内照射線量の不足が考えられた.遅発性放射線反応は全体ではGrade3が4.0%,Grade4が5.5%であったが,臨床試験に登録したため化学療法の併用を行った症例で有害事象が多い傾向が見られた.このほか一時治療としての組織内照射の適応や術後断端再発に対する小線源治療について言及する.

(5)  婦人科系腫瘍に対するCTガイド下組織内照射について

栃木県立がんセンター放射線治療部  築山 巌, 片野 進

 

はじめに:1995年6月から2001年4月までの期間に栃木県立がんセンター放射線治療部に於いて11例12部位の婦人科系腫瘍に対してCTガイド下組織内照射を施行した。本治療の適応、問題点について検討した。

対象および方法: 子宮癌頚6例、7部位、卵巣癌4例、膣癌1例である。再発11部位、初回治療1例で放射線治療後再発8例(手術and / or化学療法)、手術、化学療法後再発2例、初回治療の1例はBalky Stage IIIBの子宮頚癌で全骨盤照射後に腔内照射の代替え治療として行われた。CT透視は東芝製X-Vigorを用いた。テンプレートは主にMUPITテンプレートを用いた。後半の症例ではCT画像を治療計画ソフトPLATOにオンライン転送しOn Volume Dose point optimizationによって行った。外照射後のブースト(30、33、40、40 Gy)4部位、組織内照射単独8部位で1回照射線量は3から6.25Gyで中央値は5Gy、分割回数は3から12回で中央値6回、総線量は18から50Gyで中央値は30Gyである。用いたカテーテルは2から16本で中央値9本であった。

結果: 晩期有害事象は膀胱皮膚瘻、直腸膣瘻、下血、膣出血各1例を生じた。生存7例、死亡4例で50%生存月数は16ヶ月、5年生存率は38%であった。局所効果はCR1例、PR5例、NC+PD 6例で奏功率は50%であった。

考察:  瘻孔、出血等の晩期有害事象の発生を抑え局所効果を向上させる為には1回線量、分割回数、総線量等の再検討が必要である。カスタマイズテンプレートの作成、刺入技術の改善を図る必要がある。

 

(6)  子宮頸がん初回治療の一環としての高線量率組織内照射

国立国際医療センター放射線治療部  伊丹  純, 原  竜介, 小塚拓洋, 山下英臣

 

1998年以来、婦人科領域の悪性腫瘍に対して組織内照射を施行してきた。今回は、初回治療の一環として組織内照射が施行された子宮頸がん7症例の検討を行った。3B5例、2B2例であり、3B1例は術後照射の一環として組織内照射が施行された。最長、最短追跡期間はそれぞれ24ヶ月、3.6ヶ月である。全例硬膜外麻酔下にSyed-Neblettテンプレートを用いてタンデムとFlexiguideを刺入し、最外側のFlexiguideの外側5mmの線での平均線量を組織内照射の線量とした。Flexiguideの刺入本数は9本から31本であった。治療線量で囲まれる体積は、最小71cc、最大181cc、平均119ccであった。3Bの2例では、傍子宮組織浸潤が改善することなく進行し、1例では照射終了1年3ヵ月後に尿道口周囲+そけいリンパ節再発が見られた。残る4例は腫瘍制御が得られている。合併症としては、Grade1の直腸出血が1例、Grade2の直腸潰瘍が1例に見られた。今後さらに経験を重ねて組織内照射の適応を確立する必要がある。

 

(7)  子宮頚癌に対する組織内照射

大阪大学・放:田中英一

 同・バイオ集放治:山田優二, 中村聡明, 島本茂利, 塩見浩也, 井上武宏, 井上俊彦

 

はじめに:タンデムオボイドやタンデムシリンダーなどの腔内照射では線量分布が不十分な場合がある。このような症例にはAmerican Brachytherapy Societyは組織内照射を推奨している。

対象と方法:対象は1995年から現在までに組織内照射を施行した新鮮子宮頚癌18例である。年齢中央値69才。扁平上皮癌16例、腺癌2例。病期はTB期:1例、UA期:1例、UB期:3例、VA期:1例、VB期:10例、WA期:2例。組織内照射の適応とした理由は、腫瘍容積が大きいもの12例、膣壁浸潤7例、子宮腟上部切断術後3例である(重複あり)。

全骨盤照射30Gy後に高線量率組織内照射30Gy/5回/3日を施行した。また、骨盤リンパ節領域には、組織内照射後に中央遮蔽にて照射を行い、合計50Gyとした。アプリケータ針は硬膜外麻酔下に会陰部より経直腸エコ−下に15−30本(中央値20本)刺入した。刺入後のCTにて照射部位を決定し、1日2回の多分割照射を施行した。

結果:組織内照射容積は85-217cc(中央値113cc)であった。局所再発を2例、遠隔転移を2例に認めた。残りの14例では再発は認めていない。腫瘍の尿道浸潤が疑われた症例で、血尿、尿道狭窄をみとめ、内科的治療が必要であった。

結論:高線量率組織内照射は、腫瘍の形状に合わせた線量分布を作製できる点で、腔内照射より有利である。

 

(8)  高線量率腔内照射を併用した子宮頚癌術後照射の検討

大阪市立大学医学部放射線科   近藤聖子, 福田晴行, 細野雅子, 石井健太郎、上田和光, 山下昌祥, 高田佳江, 山田龍作

 

対象:子宮頚癌にて子宮摘出後、切除断端陽性17例、脈管浸潤が強かった2例に腔内照射併用の術後照射を行なった。Stageは1期4例、2期10例、3期5例。術式は超広汎及び広汎子宮全摘術14例、単純子宮全摘術5例。観察期間は24ヶ月〜148ヶ月。

照射方法:全骨盤照射は1回線量1.8Gyにて計50.4Gy、中央遮蔽は39.6Gyにて行なった。4例に45Gy前後の傍大動脈リンパ節照射が同時期に行なわれた。腔内照射は、4例はオボイド2本にて、残りは腟アプリケーターにて行い、いずれも膣断端表面を評価点とし、1回線量10Gy〜20Gy(中央値15Gy)、計20〜40Gy/2fr(中央値30Gy)照射した。

結果:全体の5年生存率は84.2%であった。局所再発は3例に認められ、遠隔転移はなかった。局所再発例は3例とも腔内照射の線量が20Gy/2frであり、線量不足の可能性も示唆された。放医研分類2度以上の晩期障害は8例12部位に認められた。直腸障害(5例)、膀胱障害(2例)は全て腔内照射時の直腸線量が計10Gy以上であった。また、傍大動脈リンパ節に照射した4例中3例にイレウスが生じた。

結論:腔内照射を併用した術後照射は再発危険因子をもつ子宮頚癌の制御に有効であった。晩期障害は比較的多く、今後分割方法などの改善が必要である。

 
その他の小線源治療
(9)  局所進行舌癌に対する高線量率組織内照射の経験

国立国際医療センター放射線治療部   伊丹  純, 原  竜介, 小塚拓洋, 山下英臣

 

1998年5月以来局所進行舌癌5例に対してIr-VariSourceを用いて高線量率組織内照射を行った。男:女=2:3で、年齢は51歳から76歳に及んだ。いずれも扁平上皮ガンで、T2N0、T3N0、T3N1、T4N0、T4N1であった。5例ともに頤下アプローチでPuthawala tongue catheterを刺入することにより組織内照射を施行した。T2N0の1例は、脳血栓のため四肢麻痺で手術適応とならず、局所麻酔下でcatheter刺入した。その他は、すべて全身麻酔気管切開下でcatheter刺入を行い、3例では同時に頸部郭清が施行されている。Catheter刺入本数は6本から19本に及んだ。3例でCDDPを中心とした導入化学療法、2例で外部照射(20Gyおよび40Gy)を施行した。最外側catheterの外側5mmでの線量を記載した。組織内照射総線量は35Gy-60Gy/7-11Frであった。追跡期間は、最長35ヶ月、最短6ヶ月である。一例で前口蓋帆+頸部リンパ節再発が見られたが、他の4例では局所制御されている。保存的治療をした下顎骨露出が1例に見られた。T3T4の舌癌で舌全摘の適応となる患者では導入化学療法と高線量率組織内照射で機能保存的に治療できる可能性がある。

 

 

(10)   骨軟部腫瘍における周術期小線源治療の検討

国立がんセンター中央病院 放射線治療部   角 美奈子, 池田 恢, 伊藤芳紀, 加賀美芳和, 村山重行

 

目的骨軟部腫瘍における192Ir マイクロ線源を用いた高線量率組織内照射(以下、HDR-BRT)の応用の一環として施行した軟部組織悪性腫瘍に対する周術期組織内照射の、局所制御状況および有害事象について呈示し今後の照射方法を検討する。

対象と方法1994年以降周術期にHDR-BRTを施行した17症例中治療後の経過観察が可能であった14例について検討した。HDR-BRTは、線源より5mmの点を評価点とし、1回6Gy、5-6回分割、1日2回照射、総線量30-36Gyの治療を行なった。観察期間の中央値は37カ月(8−88カ月)であった。

結果:3例が転移により死亡し、無病生存6例、担癌生存5例であり、局所は14部位中11例で制御されていた(78.6%)。有害事象は小児の下肢骨で発育障害を認めた。末梢神経障害は現時点で発生していない。

結語骨軟部腫瘍においてHDR-BRTは機能温存手術の可能性を高め局所制御に貢献していると考えられる。適切な照射線量(一回線量、総線量)、分割回数、外照射との役割分担などの課題の解決が今後必要である。

(11)  直腸癌骨盤内再発に対する高線量率組織内照射

大阪市立大学医学部放射線科 福田晴行, 松岡利幸, 細野雅子, 山下晶祥, 上田和光, 近藤聖子, 高田佳江, 石井健太郎, 山田龍作

 

はじめに進行直腸癌の手術後の局所再発は、18〜30%と報告されている。再手術の適応例は少なく、外照射による放射線療法や化学療法が行われるが、その治療効果は満足できるものではない。今回我々は、高線量率組織内照射を試みたので、その初期経験を報告する。

対象と方法対象は、2000年7月〜12月に直腸癌で腹会陰式切除術後に骨盤内再発をきたした5例5病変。年齢は46〜71歳、全例男性である。その内、3例は以前に外照射での放射線療法を受けた再々発症例である。全例、疼痛のため鎮痛剤(モルヒネ)を服用していた。過去に放射線療法を受けていない2例では、外照射50Gyの後、組織内照射21Gy/3fr/2daysを照射した。再々発の3例では、組織内照射のみで24Gy/3fr/2days(1例)あるいは30Gy/5fr/3days(2例)を照射した。線量評価点は腫瘍表面とした。組織内照射にはMicroselectron HDRを用い、仙骨硬膜外麻酔を施したうえで、CTガイド下に経会陰的にアプリケータ(金属針)9-12本を刺入した。

結果治療直後より2例で会陰部の疼痛が消失し、3例で軽減した。Follow up 期間は9〜3ヶ月であるが、現在も効果は持続している。CT上、1例で再発腫瘍は縮小し、残り4例でも増大は見られていない。照射に伴う合併症は認められていない。

まとめ直腸癌骨盤内再発に対する高線量率組織内照射は、初回再発患者に対しても再々発症例に対しても効果的な治療法であり、安全に施行できた。

 

(12)  ガラス線量計 Dose Aceを用いた組織内照射線量の測定

大阪府立成人病センター放射線治療科1) 国立大阪病院放射線科2) 能勢隆之1), 吉田  謙2), 佐々木潤一1), 宮崎正義1), 小泉雅彦1), 西山謹司1)

 

     背景:我々はCTV-based Dose Prescriptionを実施しており、正確な照射の実施と確認は重要である。これまで臨床に適した線量計がなく、線量実測による確認はできなかった。このたび組織内照射の線量実測に好適なガラス線量計Dose Ace®(千代田テクノル)が実用化され、臨床例での実測が可能となった。

 目的:組織内照射における線量実測を行い、計算値の信頼性を検証する。鉛ブロックの有効性を検証する。

 方法と対象:2000年7月から2001年4月の間、大阪成人病センターにて高線量率組織内照射を施行した32人中29人(中咽頭癌12、口腔癌8、骨盤部腫瘍7、整形腫瘍2)においてDose Ace®を用いた線量実測を施行した。測定箇所は300ヶ所以上で、頭頸部癌ではA. 腫瘍中心、B. 舌背テンプレート、C. 顎下テンプレート、D. 鉛ブロック、E. シリコンスペーサ、骨盤部腫瘍ではF. 直腸前壁、G. 尿道、H. 会陰部テンプレートであった。DとE以外の各素子の線量を治療計画装置で算出し、実測値と比較した。DとEの実測値を下顎骨吸収線量の代用とし、有効性の比較を行った。

 結果:実測値/計算値は、A. 平均 101.1%、SD 8.2%、B. 平均 92.3%、SD 15.1%、C. 平均 119.0%、SD 21.5%、F. 平均 110.8%、SD 21.3%、G. 平均 77.8%、SD 92.5%、H. 平均 134.6%、SD 20.8%であった。DはEより低く(p=0.0002)、D/Eは、平均45.9%であった。

 結論:尿道を除いて、計算値から実測値の推定は可能である。特に腫瘍中心での一致率は高かった。鉛ブロックはシリコンスペーサより顕著に有効であった。

 考察:測定値と実測値の一致率は、入力誤差を除くと、1. 素子とアプリケータとが同調して動く(A、B、H)か、独立して動く(C、F)か、2. 素子の位置における線量勾配が平坦(A)か、急峻(B)か、で決まる。Hには通過線量の影響が考えられる。尿道では素子の留置方法に問題があり、改善策を講じている。

 

(13)  CTV-based Dose Prescriptionにおける金属マーカーの有効性

 国立大阪病院放射線科1)  大阪府立成人病センター放射線治療科2) 三田市民病院放射線科3)吉田  謙1), 能勢隆之2), 小泉雅彦2), 吉田岑雄3), 西山謹司2), 御供政紀1) 

 

背景および目的:我々は高線量率組織内照射においてCTV-based Dose Prescriptionを施行している。治療計画時にはCTVを視覚化するため、金属マーカーを利用している。さらに、Organ at riskの視覚化にも応用している。金属マーカーの有効性を検証した。

方法と対象:1999年10月から2001年5月までに国立大阪病院、三田市民病院および大阪府立成人病センターでImplantを施行した51例中、CTV-based dose prescriptionに金属マーカーを用いた49例(頭頸部32、骨盤部11、骨軟部3、乳腺3)を対象とした。組織内刺入時に、@CTVの辺縁に49例179個、AOrgan at riskの治療域近傍に26例151個のマーカーを刺入・留置した。刺入時に記録したCTVとマーカー、アプリケータとの位置関係から治療計画装置上にCTVを再構成し、そのIsodose surfaceへ原則的にTumoricidal doseを投与するよう計画した。Organ at riskへの投与線量は直腸、膀胱、下顎骨、皮膚、動脈についてそれぞれMTD80%、150%、100%、50%、200%未満を目標とした。

 金属マーカーの線量、パリ法との比較、初期治療成績を検討課題とした。

結果:1. CTV用の金属マーカー179個中158個(42症例)はTumoricidal dose以上となった。9個7症例)はOrgan at riskへの影響を考え投与線量を下げた。残りの12個は刺入時のズレにより計画対象外とした。

2. Organ at riskについては尿道内の2個(1症例)のみが目標線量以上となった。下顎

骨のマーカーは7個が金属歯冠のため評価できなかった。

3. パリ法で計画した場合、42例中16例のCTV用金属マーカーがTumoricidal dose以下と

なった。Organ at riskについては、6例(直腸2、尿道3、動脈1)が目標線量以上となっ

た。

4. 局所制御率は90%であった。Tumoricidal dose以上を投与できた42例中1例のみが再

発したのに対し、投与できなかった7例中4例が再発した(p< 0.0001)。

結論と考察:金属マーカーにより、CTVに対するTumoricidal dose の投与が正確に行えた。Organ at  riskへの線量を調整できた。Tumoricidal doseを投与できなかった症例は有意に局所制御率が不良であった。課題として刺入時のズレの改善、素材の安定供給が挙げられる。

 

厚生省がん研究助成金土器屋班最終報告
(14) 食道癌・肺癌腔内照射の安全性確保のためのガイドラインについて

埼玉医科大学放射線科 土器屋卓志

 

 厚生省がん研究助成金(土器屋班 平成9−12年度)の研究成果報告書の一環として食道癌、肺癌における腔内照射のガイドラインを報告した。その概要を報告する。なお詳細な研究内容はJASTRO誌に投稿中である。このガイドラインの目的は標準的な成績を挙げることと、重症な有害事象を引き起こさないために最低限守らなければならない事柄である。

1、食道癌腔内照射

 症例分析の結果、重症放射線潰瘍を引き起こす因子は次のとおりであった。

 ・ 外照射が60Gy以上で、腔内照射の一回線量が5Gyである場合。

 ・ 病巣が頚部、腹部の場合

 ・ 腔内照射の範囲が9cm以上の場合

 ・ 腔内照射開始時に高度の狭窄がある場合

 ・ 化学療法同時併用の場合

 ・ 不適切なアプリケ−タ−使用で線源が腔内で偏在した場合

 また腔内照射では線源からの線量勾配が急峻であるので線量表示の点を統一して明確にする必要があった。以上の検討事項から次のようなコンセンサスガイドラインを決定し、食道腔内照射を行うすべての施設に周知徹底することとしたい。

(1)重篤な有害事象の危険因子は一回線量であり、5Gyを超えてはならない。

(2)直径15mm以上の二重バル−ン式アプリケ−タ−を使い、線源の偏在を予防する。

(3)線量評価はアプリケ−タ−表面から5mm外側として、粘膜線量も記録しておく

(4) 下のスケジュールを提言する。

   A、外照射50Gy+腔内照射4Gy x 3-4回(週2回)

   B、外照射60Gy+腔内照射4Gy x 2-3回(週2回)

2、肺癌気管支腔内照射

 臨床成績から次のようなコンセンサスガイドラインを作成し、報告することとし

た。また実施後の記録の統一をはかり、今後の症例蓄積のための資料とすることを提

案した。

(1)重篤な合併症の危険因子は一回線量と不適切なアプリケ−タ−の使用である。

(2)根治的照射例では一回線量は6Gyを超えてはならない。

(3)マレコット型アプリケ−タ−を使わなければならない。

(4)以下の照射スケジュールを提案する。

  A、肺門部早期癌:

     外照射40Gy+腔内照射6Gy x 3回(週一回)

  B、その他の肺癌:

     外照射60Gy+腔内照射6Gy x 2−3回(週一回)

  C、症状緩和  :

     腔内照射単独 10Gy x 1回

 

 

自慢症例、失敗症例、治療に難渋した症例の報告 
(15)   動注併用外照射後の高線量率組織内照射により制御された進行舌癌の1例

浜松医科大学放射線科 西村哲夫,鈴木一徳, 今井美智子,  鈴木佐知子,阪原晴海

同 口腔外科    福田廣志

 

症例51歳女性.舌の半分を占める深い潰瘍を持つT4N0M0の中分化型扁平上皮癌.浅側頭動脈よりカテーテルを挿入し,THP+CDDP+Pepの持続動注と同時にテレコバルトにより36 Gy /18回 /25日の外照射を行った.腫瘍はよく縮小したが残存の所見があった.粘膜反応の軽減を待って,外照射終了後35日目に高線量率線源による組織内照射を開始した.気管切開を行い全身麻酔下に16本のアプリケータを装着した.治療計画は線源から5 mmに4 Gyが照射されるようにgeometrical optimizationを行い,1日2回で合計32 Gy/8回/4日を照射した.治療開始後5年を経過し,粘膜炎は遷延したが患者の咀嚼,発声の機能は保たれ,再発や重篤な合併症は認められていない.

結論私達はN0の進行舌癌に対して高線量率線源による組織内照射を行う際に,従来全身投与ないし動注による化学療法を先行させ,腫瘍の縮小を得てから刺入を行うことを原則にしてきたが,腫瘍の大きさに限度があった.本症例ではT4に対して動注と外照射を先行させて,組織内照射を行い良好な結果を得た.この方法はより進行した舌癌にも適用可能なものと考えられる.

 

(経過と治療、治療後の経過のスライドがあります。ここをクリックして参照して下さい。

Power Point の極めて大きなファイルで表示に数分を要します

 

      (16)  放射線化学療法後に残存した原発腫瘍に対して腔内照射、組織内照射で追加治療を行い著効が得られた上咽頭癌の一例

横浜市立大学市民総合医療センター放射線科1)横浜市立大学放射線科2) 渡井喜一1), 村上麗子1), 梅澤朋子1), 金原一弘1),  大村素子2), 松原 升2)

 

はじめに:化学療法、外照射70Gy後に残存した上咽頭腫瘍にIr-192腔内照射及びAu-198組織内照射を追加して良好な結果を得たので報告する。

症例:35歳女性、主訴は耳閉、既往歴;5歳 紫斑病、25歳 良性甲状腺腫瘍摘出. 家族歴;特記すべき事なし 現病歴;1997年4月頃から耳閉感出現、耳鼻科受診するも炎症と診断。1999年1月両側鼻閉出現。6月耳鼻科にて上咽頭癌、T2bN2cM0、StageVと診断。病理診断は未分化癌。7月から9月にかけて4剤化学療法2コース及び6MV X線70Gy施行。頚部は45Gy時点で電子線に変更。4週間後の効果判定では原発巣、頚部リンパ節転移ともPRであった。10月に追加治療として右頚部リンパ節に電子線10Gy、上咽頭に腔内照射10Gy/2fr/15d施行。8週間後の効果判定で原発はpPR、頚部はcCR。12月16日(木)上咽頭後壁に1.5cm大の隆起性の残存腫瘍にAu-198グレイン刺入術50Gy。1ヶ月後に上咽頭腫瘍はpCRとなり、治療開始から約2年経過した現在、再発、重篤な晩期障害を認めない。

考察:放射線抵抗性の上咽頭未分化癌に外照射に腔内照射、組織内照射を追加して良好な経過が得られた理由として、治療期間が6ヶ月、組織内照射のTVが小さい事等を考える。

 

(17)  組織内照射で治癒した外陰癌の一例

国立札幌病院・北海道地方がんセンター放射線科   西山典明, 西尾正道,明神美弥子, 白井敬祐

 

症例 76歳女性。1984年、他院にて子宮頚癌stageVbでwhole pelvis 40Gy/20F/26day + center split 12Gy/6F/8day + 低線量率腔内照射30Gy/2F(point A)を行われ、1989年までCRでfollowされていた。1991年、外陰の腫瘤を自覚し、生検にて高分化型扁平上皮癌(verrucous carcinoma)との診断にて、12MeV電子線12Gy/6F/8day外照射後、当院紹介入院となる。

入院時所見大陰唇下部より肛門近傍までのexophyticな表在型腫瘍。転移なし。子宮頚癌の再発所見なし。

治療硬膜外麻酔下にてtumorのexophyticな部分を電気メスで切除後、137Cs針23本を外陰および膣壁に刺入。外陰部は68Gy/186hr(0.5mm distance)として計算された。抜針後、電気メスにて切除した部分のepithelizationに約6ヶ月かかり、肛門前方の一部にnon-epithelization areaを残した状態で退院。

転帰10ヵ月後には局所のepithelizationがされており、4年後の1995年まで無再発を確認。10年後の2000年に肺炎で死亡したが、死亡時までに局所のcontrolおよび合併症のないことを確認している。

結論子宮頚癌放射線治療の既往のあるexophyticな外陰癌に対して、電気メスによる腫瘍形成および小線源治療を行い、晩期有害事象がなく、長期にわたり無病生存を得ることができた。

 

(経過と治療、治療後の経過のスライドがあります。ここをクリックして参照して下さい。

Power Point の極めて大きなファイルで表示に数分を要します

 

(18)   直腸癌局所再発に対してイリジウム組織内照射を施行した1例

札幌医科大学医学部放射線医学講座 晴山雅人, 坂田耕一, 大内  敦, 永倉久泰, 伊藤克哉, 染谷正則, 中田健生

 

 患者は57歳の女性で、1991年11月に直腸癌に対しMiles手術で治療される。1992年5月に臀部痛が出現し精査にて会陰部から骨盤内に局所再発と判明される。腫瘍に対し10MVライナックX線50Gy/25分割にて照射する。腫瘍が残存するため、減量手術と共に腫瘍床に一面刺入を目的に9本のチュウビングを施行し、手術10日目から45Gy/4日のイリジウム組織内照射を行う。6ヶ月後に会陰部の膿瘍を生じ、臀部に3×2cmの皮膚欠損を認めるも、7年以上局所制御がなされている。

 以上、直腸癌局所再発に対して外部照射、減量手術およびイリジウム組織内照射に著効し長期にわたり無病生存している1例を報告する。

 

 

(19)  知っておくべき小線源の知識  

医療用小線源の流通  

 

 

平成13年6月23日 

日本アイソトープ協会   須藤 幸雄

 

 

 

 

 

 

 

1.医療法の改正について

 

 

 

 

  (1)国際防護委員会の1990年勧告の取り入れ

 

  (2)エックス線装置等の防護基準

 

 

 

  (3)新しい医療技術への対応

 

 

 

2.医療用小線源の流通について

 

 

 

   1)Au−198 グレイン、Ir−192 シンワイヤー線源等の流通

   2)健全性の確認

 

 

 

 

   3)引取線源

 

 

 

 

 

3.放射線管理上の注意点

 

 

 

 

   線源の出入りを証明する書類

 

 

 

  1)放射線管理上の書類:譲渡書・譲受書

 

 

      納品時 出荷案内書、受領書

 

 

 

      返却時 密封線源引取依頼書 密封放射線源受理書

  2)その他

 

 

 

 

 

 

      返却線源の健全性の確認

 

 

 

      ダミー線源との識別

 

 

 

 

4.事故発生に伴う対応と連絡体制

 

 

 

    1)連絡体制

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

消防署

 

 

 

 

 

 

保健所

事故発見者

 

RI責任者

 

病院長

 

所轄労働基準監督署

 

 

 

 

 

 

警察署

 

 

 

 

 

 

文部科学省

  2)対応

 

 

 

 

 

 

    汚染の広がりの防止

 

 

 

 

    RIを安全な場所に移し、縄を張りし標識を付けて見張り人をつける。

    施設内又は付近にいる人に非難警告

 

 

    被害者の健康診断

 

 

 

 

(20) American Brachytherapy Society (ABS)参加報告

浜松医科大学放射線科 西村 哲夫

 

5月20日〜22日までABSのannual meetingがカナダのバンクーバーで開催された.昨年はGEC-ESTROなどとの4年に一度の合同会議として開催されたが,今回はCanadian Brachytherapy Group (CBG)との共催であった.

 シンポジウムのトピックスとしては今年もまず初日に前立腺が取り上げられた.二日目には子宮体癌と高線量率線源による頭頸部腫瘍の治療が,ついで最終日にはQAや血管内治療が討議された.

(21) 小線源治療に関する全国調査報告

広島大学 放射線科   広川 裕

 

  日本アイソトープ協会の小線源治療データベースWGで、「治療用密封線源の保有と治療実施状況の調査」が計画され、小線源治療に関連するデータベースを統合して作成した施設リスト(施設数は302施設)に基づき、各施設に調査用紙を送付した。最終的に302施設すべてから回答を得た。255施設(84%)が小線源を保有していると回答した。

リモートアフターローディング装置(RALS)の保有状況は、Ir-192 RALS:91施設、Co-60 RALS:123施設、Cs-137 RALS:11施設で、いずれかを保有する施設は、216施設であった。装置に装備されない低線量率密封小線源の保有状況は、Cs-137線源:58施設、Co-60線源:14施設、Ra-226線源:31施設、Sr-90眼科用線源:24施設、Ir-192線源:42施設、Au-198グレイン:59施設であり、いずれかを保有する施設は、116施設であった。

平成12年における小線源治療の実施状況は、220施設(86.2%)で5523例の小線源治療が行われていた(平均:25.1例)。腔内照射の実人数は、RALS治療:4164例/194施設(平均:21.5例)、低線量率小線源治療:352例/30施設(平均:11.7例)であった。組織内照射の実人数は、RALS治療:370例/39施設(平均:9.5例)、低線量率小線源治療:399例/32施設(平均:12.5例)であった。

 

(22)   RALS 周辺機器と線量計算システムの概要 

マイ(1)  クロセレクトロンHDRのアプリケータ及びアプリケータ再構成方法のご紹介

千代田テクノル医療機器技術グループ 四方田 章裕

 

2)    (2)  ブフラー・facts用アプリケータと計算装置について

ユーロメディテック株式会社  谷 義正

 

(3)  VariSource アプリケータとBracyVisionによる計画作成

バリアンメディカルシステム  上總 中童

 

()  ガンマメッドの線量分布計算と血管内照射をめぐる話題

                    シーアイエスダイアグノスティック   加藤 明